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九州大学 2000年度 後期日程 第2次学力試験理系(後期)数学 第4問

以下の問いに答えよ.

(1) 碁石(ごいし)には白と黒の2種類の石がある.
ところがA君は『任意の碁石の集合は1種類の石しか含まない』ことを以下のように証明しようとした.
A君の数学的帰納法の適用方法が誤っている理由を説明せよ.

〔A君の証明〕

どの碁石の集合Sも1種類の石しか含まないことを証明したい.
そこで集合Sに含まれる碁石の数nに関する数学的帰納法によってこのことを証明する.

(I)  n=1の場合を考える.
1個の碁石からなるどの碁石の集合Sについても,Sに含まれる碁石は明らかに1種類である.

(II)  n=kの場合に成立することを仮定する.
すなわち,k個の碁石を含むどの碁石の集合Sについても,Sに含まれる碁石は1種類であることを仮定する.
そして,n=k+1の場合に成立することを示す.
すなわち,k+1個の碁石を含む碁石の集合Tを任意に選んだとき,
Tに含まれる碁石は1種類であることを証明する.

Tから勝手に2つの碁石abをとる.残りの集合をTとする.
Taを加えた集合はk個の碁石を含むので,帰納法の仮定から,この集合に含まれる碁石は1種類である.
したがって,Tに含まれる碁石とaとは同じ種類である.
一方,Tbを加えた集合もk個の碁石を含むから,
同様にして,Tに含まれる碁石とbとは同じ種類である.
ゆえにabは同じ種類である.すなわち,Tは1種類の碁石からなる.

(2) 20円以上の任意の値段分の切手は5円切手と6円切手の組合わせとして買えることを示せ.

難易度4/ 10計算量3/ 10目安12

論証・証明整数 数学的帰納法、反例構成、数え上げ

方針

(1) は帰納法の帰納段階がすべての k で成立していないことを指摘する。特に k=1 から 2 個の場合へ進むとき、共通部分 T が空になり、ab を結びつける石が存在しない。(2)は20円から24円までを具体的に作り、そこから5円切手を1枚足すことで5ずつ上の金額を作れることを示す。これは5つの初期値をもつ帰納法である。

解答

(1)
A君の証明では、k+1 個の集合 T から2つの碁石 a,b を取り除き、残りを T としている。そして T{a},T{b} がどちらも1種類の石しか含まないことから、ab が同じ種類だと結論している。

この議論が成り立つには、T の中に少なくとも1つ碁石があり、その石を介して ab が同じ種類だと言える必要がある。しかし、k=1 から k+1=2 の場合を示す段階では、T は2個の碁石からなる集合であり、そこから a,b を取り除くと T= である。空集合には ab と比べるための碁石がない。

したがって「T に含まれる碁石と a は同じ種類である」「T に含まれる碁石と b は同じ種類である」という部分が、T が空の場合には意味をもたない。よって帰納法の n=1 から n=2 への段階が証明されておらず、数学的帰納法の適用が誤っている。

(2)
まず20円から24円までを5円切手と6円切手で作る。 20=45 であり、21=35+6,22=25+26, 23=5+36,24=46 である。したがって20円、21円、22円、23円、24円はすべて作れる。

次に、ある金額 N が5円切手と6円切手の組合せで作れるなら、そこに5円切手を1枚加えることで N+5 円も作れる。したがって、20円が作れるので25円、30円、35円、 が作れる。同様に21円から26円、31円、 が作れ、22円、23円、24円からもそれぞれ5ずつ大きい金額がすべて作れる。

20以上の任意の整数は、20、21、22、23、24のいずれかに5の倍数を加えた形に書ける。よって20円以上の任意の値段分の切手は、5円切手と6円切手の組合せとして買える。

別解

解法2(失敗する基底段階と強い帰納法)

方針

(1) は帰納段階で2集合の共通部分が空になる最初の箇所を特定する。
(2)は20から24までの連続5整数を基礎にした強い帰納法で示す。

解答

(1)
k=1 から k+1=2 へ進む段階では、
T から a,b を除いた T は空集合である。
T{a}T{b} がそれぞれ1種類でも、
両集合に共通の碁石がないため、a,b が同種とは結論できない。
従って帰納段階が最初の一歩で成立していない。

(2) 20=45,21=35+6,22=25+26,23=5+36,24=46.従って20から24までは作れる。N25 とし、
N5 までのすべての20以上の整数が作れると仮定する。
N520 なので N5 は作れ、そこへ5円切手を1枚加えれば
N も作れる。強い帰納法により20円以上のすべてが作れる。

総評

難度は10段階中4、計算量は10段階中3。目安は12分。(1)は「帰納法が間違っている」とだけ書くのではなく、どの段階で破綻するかを具体的に示す必要がある。破綻点は n=2 を示すときに共通部分が空になること。(2)は20から24の5つの初期値を作り、以後は5円切手を足して進める。通常の1つの初期値ではなく、5つの剰余類をまとめて扱う帰納法だと理解するとよい。

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出典: 九州大学 2000年度 後期 理系 後期 第4問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。