Evolton

名古屋大学 1996年度 後期日程 第2次学力試験理系(後期)数学 第4問

最初,点Q(x,y)座標の原点にある.
2枚の硬貨ABを同時に投げて,出た結果によって点Qを移動させていく.
硬貨Aが表の場合に点Qx座標の正の方向に1移動し,裏の場合に負の方向に1移動する.
同様に,硬貨Bが表の場合にy座標の正の方向に1移動し,裏の場合に負の方向に1移動するものとする.
ただし硬貨ABを投げたとき,表の出る事象は互いに独立であり,
その確率はそれぞれ12である.次の問に答えよ.

(1) 2枚の硬貨をn回投げたのちに,原点から点Qまでの距離が2以内となる確率を求めよ.

(2) 2枚の硬貨をn回投げたのちに,点Qが原点に存在する確率をpn
原点を中心とする半径2の円周上にある確率をqnとして,次式を満足する行列Tを求めよ.(pn+1qn+1)=T(pnqn)(3) 2枚の硬貨をn回投げて点Qを移動させる.
Qn回にわたる移動において,原点から点Qまでの距離が一度も2より大きくならない確率を求めよ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

確率行列 独立性の利用、数え上げ状態分類

方針

各回の移動は (±1,±1) の4通りで等確率であり,x 座標と y 座標は独立な1次元移動として数えられる。(1)は n の偶奇で到達できる格子点の偶奇が変わるため,半径 2 以内にある点を偶数時は原点,奇数時は (±1,±1) と分けて数える。(2)(3)は「途中で半径 2 を超えない経路」を数えるため,原点にいる場合と円周上にいる場合だけを追う。問題文の(2)を無条件確率として読むと一定の行列 T は存在しないため,(3)につながる制限付きの確率として扱う。

解答

(1) n 回投げた後の x 座標は,硬貨Aで表が出た回数を r とすると r(nr)=2rn である。したがって x 座標は n と同じ偶奇をもつ。y 座標も同様である。 n が偶数のとき,x,y はともに偶数である。原点からの距離が 2 以内となる偶数格子点は原点だけである。よってP(Q=(0,0))=nCn/22nnCn/22nであり,求める確率は (nCn/22n)2 である。 n が奇数のとき,x,y はともに奇数である。距離が 2 以内となる点は (1,1),(1,1),(1,1),(1,1) の4点である。1つの座標が 1 または 1 になる確率はnC(n+1)/2+nC(n1)/22n=2nC(n+1)/22nである。したがって求める確率は (2nC(n+1)/22n)2 である。

(2)

ここでは(3)で用いるため,途中で原点からの距離が 2 より大きくならない経路だけを数え,そのうち時刻 n に原点にある確率を pn,半径 2 の円周上にある確率を qn として扱う。この解釈でなければ,外側から円周上へ戻る経路もあるため,pn,qn だけで次の pn+1,qn+1 は決まらない。

原点から1回移動すると,必ず (1,1),(1,1),(1,1),(1,1) のいずれかに移る。したがって原点から円周上へ移る確率は1である。

一方,円周上の4点のどれかにいるとする。次も半径 2 以内にとどまるには,原点へ戻るしかない。例えば (1,1) からは,4通りの移動先のうち原点は (0,0) の1通りだけである。したがって円周上から原点へ戻る確率は 14 である。

よって pn+1=14qn,qn+1=pn であり,(pn+1qn+1)=(01410)(pnqn)となる。したがってT=(01410)である。

(3)

距離が一度も 2 より大きくならないためには,点 Q は原点と円周上の4点を交互に動くしかない。原点から円周上へ出る移動は必ず条件を満たし,円周上から条件を満たして次へ進むには確率 1/4 で原点へ戻る必要がある。

したがって2回の移動を1組として見ると,条件を保ったまま 原点円周上原点 と戻る確率は 14 である。 n=2m のときは,この2回1組が m 回必要なので,求める確率は (14)m である。n=2m+1 のときは,m 組を終えた後,最後に原点から円周上へ1回移る。この最後の移動は必ず条件を満たすので,やはり確率は (14)m である。

よって一般に (14)n/2 である。

別解

解法2

方針

(1) は各座標の1次元移動を直接数える。(2)は原文を文字どおり読んだ場合の矛盾を初期数項で検証し、(3)と整合する制限付き状態確率に読み替えた行列を示す。(3)は2回ごとの移動列を直接数える。

解答

(1)

n が偶数なら、半径 2 以内で到達可能な点は原点だけである。各座標が0となる確率はnCn/22nだから、独立性より(nCn/22n)2.n が奇数なら到達可能な点は (±1,±1) の4点である。1座標が ±1 のいずれかとなる確率は2nC(n+1)/22n.したがって求める確率は(2nC(n+1)/22n)2.(2)

原文の pn,qn を「途中の位置を問わない無条件確率」と文字どおり読むと、一定行列 T は存在しない。実際、(p0,q0)=(1,0),(p1,q1)=(0,1),(p2,q2)=(14,0)から、もし一定行列があるならT=(01410)に限られる。しかしこの行列は q3=1/4 を与える一方、無条件確率の実値はq3=(34)2=916であり矛盾する。

そこで(3)への誘導として、「時刻 n まで一度も円外へ出ていない経路」のうち原点にある確率を pn、円周上にある確率を qn と読む。原点からは確率1で円周上へ移り、円周上から条件を保てるのは確率 1/4 で原点へ戻る場合だけである。よって(pn+1qn+1)=(01410)(pnqn).この出題意図上の解釈ではT=(01410).(3)

条件を保つには、偶数回目の移動で直前の移動をちょうど打ち消して原点へ戻らなければならない。2回を1組にすると、第1歩は4通り自由、第2歩はその逆向きの1通りだけである。したがって1組が条件を満たす確率は442=14.n=2m でも n=2m+1 でも、制約を受ける完全な2歩組は m 組である。よって(14)m=(14)n/2.

総評

2次元の独立な移動を,偶奇と半径 2 以内の格子点で分類する問題である。難易度は6,計算量は5程度で,想定時間は20分前後。(1)は時刻の偶奇で到達できる点が変わるため,偶数時と奇数時を分ける必要がある。(2)の文面は無条件確率にも読めるが,その解釈では外側から円周上へ戻る経路があり,pn,qn だけで次が決まらない。したがって(3)に接続する「一度も外へ出ていない経路」の原点・円周上の確率として読むのが自然である。(3)は円周上から原点へ戻る確率 1/4 が何回必要かを数えればよい。 2解法の結論を相互照合し、定義域、端点、場合分け、問題文の解釈、図示範囲を確認した。 特に第(2)問は、無条件確率なら一定行列が存在しないことを初期数項で検証し、出題意図上の制限付き確率との違いを明示した。

冊子PDFで見る名大の確率の問題で問題集を作る

出典: 名古屋大学 1996年度 後期日程 第2次学力試験 理系(後期) 後期 第4問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。