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名古屋大学 2017年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第4問

n を自然数とする。0でない複素数からなる集合 M が、次の条件 (I),(II),(III) を満たしている。

(I) 集合 Mn 個の要素からなる。

(II) 集合 M の要素 z に対して、1z,zはともに集合 M の要素である。

(III) 集合 M の要素 z,w に対して、その積 zw は集合 M の要素である。ただし、z=w の場合も含める。

このとき、次の問いに答えよ。

(1) 1 および 1 は集合 M の要素であることを示せ。

(2) n は偶数であることを示せ。

(3) n=4 のとき、集合 M は一通りに定まることを示し、その要素をすべて求めよ。

(4) n=6 のとき、集合 M は一通りに定まることを示し、その要素をすべて求めよ。

難易度7/ 10計算量5/ 10目安24

複素数平面整数論証・証明 必要十分条件、場合分け、数学的帰納法、存在証明

方針

(1) は任意の元zとその逆数の積から1を作り,条件(II)で1を得る。(2)は写像zzで元が2個ずつ組になることを使う。(3)(4)では,1,1以外の元zを取り,z,z2,z3,がすべて有限集合Mに入ることから,ある正整数mzm=1となることを使う。n=4では残り2元しかないのでz2=1n=6では最小のmが3,4,5,6のどれかに限られ,m=4,5を矛盾で除いて,結局6乗して1になる複素数全体に定まることを示す。

解答

(1) Mの要素を1つzとる。条件(II)より1/zMの要素である。条件(III)より,これらの積 z1z=1Mの要素である。さらに条件(II)をz=1に適用すると 1Mの要素である。

(2)
条件(II)より,Mの任意の要素zに対してzMの要素である。しかもz=zならz=0であるが,Mの要素は0でないので,zzは必ず異なる。

したがってMの要素は {z,z} という2個ずつの組に分けられる。よって要素数nは偶数である。

(3) n=4とする。(1)より1,1Mである。残りの要素の1つをzとすると,(2)よりzも要素であり,M={1,1,z,z} と書ける。

条件(II)より1/zMである。z±1なので,1/zzまたはzのどちらかである。もし1/z=zなら z2=1 よりz=±1となり矛盾する。したがって 1z=z であり,z2=1 を得る。よってz=±iであり,集合としては一通りに M={1,1,i,i} と定まる。

(4) n=6とする。1,1以外の要素を1つ取り,それをzとする。条件(III)より z,z2,z3, はすべてMの要素である。Mは有限集合なので,この列には同じ値が現れる。したがって,ある正の整数mについて zm=1 となる。以下,そのようなmのうち最小のものを考える。z±1よりm>2であり,また1,z,z2,,zm1は互いに異なるのでm6である。したがって m=3,4,5,6 のいずれかである。 m=4は不可能である。このときz2=1であり,1,1,z,zの4要素がすでにある。残りの要素の1つをwとすると,wも要素であり,M={1,1,z,z,w,w} である。ところがzwMである。zw=±1ならw=±1/z=±zzw=±zならw=±1zw=±wならz=±1となり,いずれもwの取り方またはz±1に反する。よって矛盾する。 m=5も不可能である。1,z,z2,z3,z4は5個の異なる要素であり,さらに1Mに入る。これだけで6個である。しかしzMに入る。もし z1,z,z2,z3,z4 のいずれかに等しいなら、右辺の5乗は1である。一方(z)5=z5=1であり、矛盾する。したがって z はこれら5個とも 1 とも異なる新しい要素となり、要素数が6を超えてしまう。

よってm=3またはm=6である。 m=3のとき,1,z,z2が3個の異なる要素であり,さらにそれらの負の数 1,z,z2Mに入る。これで6個あり,M{1,z,z2,1,z,z2} である。ここでzは1でない3乗根だから,これらは6乗して1になる複素数全体である。 m=6のとき,1,z,z2,z3,z4,z5が6個の異なる要素なので,Mはこの6個である。また(z3)2=1で,z31だからz3=1である。したがって,この場合もMは6乗して1になる複素数全体である。

以上より,n=6のときMは一通りに定まり,その要素は1,1,1+3i2,13i2,1+3i2,13i2である。

別解

解法2

方針

任意の zM に対し、写像 wzw が有限集合 M の要素を並べ替えることを利用する。全要素の積を写像の前後で比較すると zn=1 が得られる。よって Mn 乗して1になる複素数全体に一致し、n=4,6 の集合を一度に決定できる。

解答

(1)
任意の zM に対して 1/zM であり、積について閉じているからz1z=1M.さらに条件 (II)1 に適用して1M.(2)
zM なら zM である。z=z なら z=0 となるが、M の要素は0でない。よって要素は {z,z} という2個ずつの組に分かれ、n は偶数である。

(3) (4)を同時に考える。
M の要素をw1,w2,,wnとし、その積を P=w1w2wn とおく。すべての要素は0でないため P0 である。

zM を固定する。条件 (III) より、各 wj に対して zwjM である。またzwj=zwkなら z0 より wj=wk である。したがってzw1,zw2,,zwnM の全要素を並べ替えたものである。

両者の全要素を掛け合わせると(zw1)(zw2)(zwn)=w1w2wn.左辺は znP だからznP=P.P0 よりzn=1.これはすべての zM に成り立つ。方程式 zn=1 の解は相異なる n 個であり、Mn 個の要素をもつから、Mn 乗して1になる複素数全体である。

(3)
n=4 のときM={1,1,i,i}.(4)
n=6 のときM={1,1,1+3i2,13i2,1+3i2,13i2}.いずれも集合として一通りに定まる。

総評

難度7,計算量5。目安時間は24分。抽象的に見えるが,使う事実は「積を繰り返しても集合内に残る」「有限集合なので同じ値が現れる」の2つである。群論の用語に頼らず,zm=1となる最小のmを場合分けすれば十分に書ける。n=6ではm=4,5を除く論証が薄くなりやすいので,余った要素wzが新要素になる矛盾を丁寧に示すことが得点差になる。

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出典: 名古屋大学 2017年度 前期 理系数学 第4問(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。