Evolton

京都大学 1987年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第6問

ABC3人がいて,それぞれ,赤札と白札を1枚ずつ持っている.
この状態から出発して,次のような札の移動を何回か行う.

各回の移動では,ABに,BCに,CAに,持っている2枚の札のうち1枚を無作為に選んで,同時に渡す.

(1) 何回かの移動の後起こりうる札の状態を全部書き上げ,
それらにF0,F1,F2,というように記号をつけよ.
ただし,最初の状態にはF0をつけよ.

(2) 上で得た各状態Fiから1回の移動でFjになる確率pijをそれぞれ求めよ.

(3) 最初の状態からn回移動したとき,F0の状態にかえっている確率qnを求めよ.

難易度7/ 10計算量7/ 10目安25

確率数列 状態分類確率漸化式漸化式の変形

方針

各人が持つ赤札の枚数を (rA,rB,rC) で表す。赤札は全部で3枚、各人は常に2枚持つので、起こりうる赤札枚数は (1,1,1)(2,1,0) の並べ替えだけである。(2)では F0=(1,1,1) からは8通りの渡し方を数え、その他の状態では赤札2枚の人と0枚の人の行動が決まり、赤札1枚の人だけが確率 12 で分岐することを使う。(3)では、非初期状態のどれからも F0 へ戻る確率が 12 であるため、qn+1=14qn+12(1qn) に集約する。

解答

(1)
状態を、A,B,C が持っている赤札の枚数の三つ組 (rA,rB,rC) で表す。赤札は全部で3枚であり、各人はいつも2枚の札を持っているので、各成分は 0,1,2 のいずれかで、和は3である。したがって可能な形は (1,1,1) または (2,1,0) の並べ替えである。

最初の状態を F0=(1,1,1) とする。残りの6状態を、移動の向きに沿って F1=(2,1,0),F2=(1,2,0),F3=(0,2,1), F4=(0,1,2),F5=(1,0,2),F6=(2,0,1) と名づける。これで起こりうる状態はすべてである。

(2)
まず F0=(1,1,1) から考える。この状態では3人とも赤札1枚、白札1枚を持っているので、それぞれ赤を渡すか白を渡すかが確率 12 ずつである。3人の選び方は全部で 23=8 通りである。

3人が全員赤を渡す場合、または全員白を渡す場合には、各人が受け取る赤札数も失う赤札数も同じなので F0 にとどまる。この2通りの確率は 28=14 である。残り6通りは、F1,,F6 のいずれかに1通りずつ移る。したがって p00=14,p0j=18(j=1,2,,6) である。

次に F1,,F6 からの移動を考える。これらの状態では、赤札を2枚持つ人は必ず赤札を渡し、赤札を0枚持つ人は必ず白札を渡す。赤札を1枚持つ人だけが、赤札を渡すか白札を渡すかで2通りに分かれる。したがって各状態からの分岐は確率 12 ずつである。

例えば F1=(2,1,0) では、A は必ず赤を渡し、C は必ず白を渡す。B が赤を渡せば全員が赤1枚ずつになり F0 へ移る。B が白を渡せば (1,2,0)=F2 へ移る。よって p10=p12=12 である。同様にp20=p23=12,p30=p34=12,p40=p45=12,さらにp50=p56=12,p60=p61=12であり、ここに書いたもの以外の pij はすべて0である。

(3)
最初の状態から n 回移動した後に F0 にいる確率を qn とする。最初は F0 にいるので q0=1 である。

(2) より、現在 F0 にいるとき、次に F0 にいる確率は 14 である。一方、現在 F0 以外のどの状態にいても、次に F0 に移る確率は 12 である。したがって qn+1=14qn+12(1qn) である。整理すると qn+1=1214qn である。

この漸化式の一定値を L とすると L=1214L だから L=25 である。よって qn+125=14(qn25) である。q0=1 より q025=35 だから qn=25+35(14)n である。

別解

解法2:7状態を二つの群へまとめる

方針

全員が赤白1枚ずつの状態を U、それ以外の6状態をまとめて V とする。六つの状態の対称性を使って二群間の確率だけを数え、定常値との差を等比数列にする。

解答

(1)
各人の赤札枚数で状態を表すと、可能なのはF0=(1,1,1)と、(2,1,0) の6個の並べ替えだけである。これらを順に F1,,F6 と名づければよい。

(2)
F0 では3人がそれぞれ赤か白を確率 1/2 で渡す。8通り中、全員赤または全員白の2通りで F0 に戻るからp00=14.残る6通りは F1,,F6 へ1通りずつ移るのでp0j=18(1j6).F0 以外では、赤2枚の人と赤0枚の人が渡す色は決まり、赤1枚の人だけが二分する。その一方は F0 へ、他方は次の非初期状態へ移るので、各行の非零確率は 1/2,1/2 である。

(3)
F0 を群 U、残る6状態を群 V とまとめる。上の結果からUU:14,UV:34,VU:12,VV:12.n 回後に U にいる確率を qn とするとqn+1=14qn+12(1qn).定常値 2/5 との差を sn=qn2/5 とおけばsn+1=14sn,s0=35.したがってqn=25+35(14)n.

総評

難度7、計算量7、目安時間25分。7状態を全て列挙する方法と、対称な6状態を一群にまとめる方法で遷移を確認した。非初期状態のどこからも F0 へ戻る確率が 1/2 であることが一次漸化式への集約点である。確率母関数や行列は用いていない。

冊子PDFで見る京大の確率の問題で問題集を作る

出典: 京都大学 1987年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。