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名古屋大学 2010年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第3問

はじめに,Aが赤玉を1個,Bが白玉を1個,Cが青玉を1個持っている.
表裏の出る確率がそれぞれ12の硬貨を投げ,
表が出ればABの玉を交換し,裏が出ればBCの玉を交換する,という操作を考える.
この操作をn(n=1,2,3,)くり返した後に
ABCが赤玉を持っている確率をそれぞれanbncnとおく.

(1) a1b1c1a2b2c2を求めよ.

(2) an+1bn+1cn+1anbncnで表せ.

(3) nが奇数ならばan=bn>cnが成り立ち,
nが偶数ならばan>bn=cnが成り立つことを示せ.

(4) bnを求めよ.

難易度5/ 10計算量5/ 10目安20

確率数列 状態分類確率漸化式漸化式の変形

方針

赤球の位置だけを追えばよい。1回の操作後に赤球がどこへ移るかを,表が出た場合と裏が出た場合で分けて確率の漸化式を作る。大小関係は3つの確率を直接求めてもよいが,まず ancnbn の漸化式を抜き出すと簡潔に処理できる。最後に n の偶奇で (1/2)n の符号が変わることを使う。

解答

(1) 最初,赤球は箱 A に入っている。

1回目の操作では,表なら AB を入れ替えるので赤球は B に移り,裏なら BC を入れ替えるので赤球は A に残る。したがって a1=12,b1=12,c1=0 である。

2回目については,1回目後の状態からもう一度考える。赤球が A にある確率は 1/2B にある確率は 1/2 である。赤球が A にあるとき,次に表が出ると B へ移り,裏が出ると A に残る。赤球が B にあるとき,次に表が出ると A へ移り,裏が出ると C へ移る。よって a2=12,b2=14,c2=14 である。

(2) n 回目の操作後に赤球が A,B,C にある確率をそれぞれ an,bn,cn とする。

次の操作で赤球が A にあるのは,直前に A にあって裏が出る場合,または直前に B にあって表が出る場合である。したがって an+1=12an+12bn. 同様に,赤球が B にあるのは,直前に A にあって表が出る場合,または直前に C にあって裏が出る場合であるから bn+1=12an+12cn. また,赤球が C にあるのは,直前に B にあって裏が出る場合,または直前に C にあって表が出る場合であるから cn+1=12bn+12cn. よってan+1=an+bn2,bn+1=an+cn2,cn+1=bn+cn2である。

(3) まず an+bn+cn=1 である。また漸化式の第1式と第3式を引くとan+1cn+1=an+bn2bn+cn2=ancn2である。a1c1=1/2 だから,帰納的に ancn=12n を得る。

次に bn+1=an+cn2=1bn2 である。これを bn+113=12(bn13) と変形する。b1=1/2 より b113=16 なのでbn13=16(12)n1=13(12)n.したがって bn=1313(12)n である。 n が奇数のとき,(1/2)n<0 だから bn=13+132n. さらに d=2n とおくと ancn=d,an+bn+cn=1,bn=13+d3 である。cn=and を和の式に代入すると 2an+bnd=1 なのでan=1bn+d2=1(13+d3)+d2=13+d3=bnである。しかも d>0 より ancn=d>0 だから an=bn>cn である。 n が偶数のとき,(1/2)n>0 だから bn=13132n. このときも d=2n とおくと ancn=d,an+bn+cn=1,bn=13d3 である。cn=and を和の式に代入すると 2an+bnd=1 よりan=1bn+d2=1(13d3)+d2=13+2d3となる。したがって cn=and=13d3=bn であり,d>0 より an>bn=cn である。

以上より,奇数回では an=bn>cn 偶数回では an>bn=cn が成り立つ。

(4) 上で求めた通り,bn=1313(12)n である。

赤球の位置の状態遷移

頂点は赤球の現在位置を表す。

別解

方針

赤球の位置確率を3成分の列ベクトルにまとめ、遷移行列の固有方向へ初期状態を分解する。3つの確率の明示式を同時に求め、n の偶奇に応じて (1/2)n の符号を代入すれば、大小関係と bn が直ちに得られる。

解答

(1)
初期状態をv0=(100)とする。1回、2回の遷移を直接行うとv1=(1/21/20),v2=(1/21/41/4).よってa1=b1=12,c1=0,a2=12,b2=c2=14.(2)vn=(an,bn,cn)T とおく。状態遷移図からvn+1=Tvn,T=12(110101011).したがってan+1=an+bn2,bn+1=an+cn2,cn+1=bn+cn2.(3)e0=(111),e1=(101),e2=(121)とおくとTe0=e0,Te1=12e1,Te2=12e2.またv0=13e0+12e1+16e2である。よってvn=13e0+12(12)ne1+16(12)ne2,すなわちan=13+16(12)n+12(12)n,bn=1313(12)n,cn=13+16(12)n12(12)n.r=2n>0 とおく。n が奇数ならan=bn=13+r3,cn=132r3,だから an=bn>cn である。

n が偶数ならan=13+2r3,bn=cn=13r3,だから an>bn=cn である。

(4)
上の第2成分からbn=1313(12)nである。

総評

状態は3つあるが,対称性を眺めるだけでなく,どの状態からどの状態へ移るかを1回分の操作で整理すると漸化式が自然に出る。大小関係は an,bn,cn を全部先に求めなくても,ancnbn の2本を解けば偶奇の構造が見える。特に (1/2)n の符号が奇数・偶数で変わることが,本問の不等式の正体である。

漸化式を得た後は、確率の和が1であることと初期値を代入し、式の整合性を確認できる。第1解法は差と保存量から短く進み、第2解法は遷移行列の3つの固有方向から偶奇の構造を一度に説明する。どちらでも n=1,2 を代入して検算できる。

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出典: 名古屋大学 2010年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。