方針
各試行は4つの成分のうち1つを1増やす操作であり、 行列が正則になるかは行列式で判定する。(1) は短い列を直接数える。2回目で初めて正則になるには対角または反対角の2成分を1回ずつ選ぶ。3回目では、2回後に同じ1成分だけが正の場合と、同じ行または同じ列の2成分が正の場合から、3回目に外側を選ぶ場合を数える。(2) は第1行の2成分だけが正になる確率で、 だけを使い、かつ両方が少なくとも1回出る場合を数える。(3) は初めて正則になる直前の状態が、1つの行・列に限られる場合、または1成分だけの場合に分かれることを使って一般項を出す。
解答
(1)
2回の試行後に初めて正則になる場合を考える。1回後の行列は1つの成分だけが1で、必ず正則でない。2回後に正則になるには、選ばれた2つの成分が対角成分 であるか、反対角成分 であればよい。それぞれ順序が2通りあるので、有利な列は 通りである。全体は 通りだから である。
次に を求める。3回目で初めて正則になるには、2回後までは正則でなく、3回目で正則になればよい。
2回後に同じ成分だけが2回選ばれている場合は4通りである。この状態から正則にするには、反対側の対角成分を選ぶしかないので、3回目の選び方は1通りである。したがってこの型は 通りである。
2回後に同じ行または同じ列の2成分が1回ずつ選ばれている場合を考える。行は2本、列は2本あり、それぞれ2成分の選ばれる順序が2通りあるので 通りである。この状態からは、その行または列の外側にある2成分のどちらを選んでも行列式は0でなくなる。したがって3回目の選び方は2通りで、この型は 通りである。
よって有利な3回の列は 通りであり、全体は 通りだから である。
(2) 回後に第1行の成分がいずれも正で、第2行の成分がいずれも0であるためには、 回のすべてで または の札を選び、しかも 、 の両方が少なくとも1回ずつ選ばれればよい。 だけを使う列は 通りである。このうち だけ、または だけの列がそれぞれ1通りずつあるので、両方が少なくとも1回出る列は 通りである。全体は 通りだから である。
(3) がすべて正則でないまま進んだとする。このとき 回後の正の成分の位置は、1つの行に含まれるか、1つの列に含まれるか、または1つの成分だけである。実際、2つの行にも2つの列にもまたがる正の成分が現れると、どこかの時点で行列式が0でなくなる。
まず、1つの行または1つの列の2成分がともに正である場合を数える。行2本、列2本の合計4通りがあり、それぞれの確率は (2) と同じく である。この状態から次の1回で正則になるには、その行または列の外側の成分を選べばよい。外側の成分は2個なので、その確率は である。したがってこの場合の寄与は である。
次に、同じ1成分だけが 回選ばれていた場合を数える。成分の選び方は4通りで、それぞれの確率は である。この状態から次の1回で正則になるには、反対側の対角成分を選ぶ必要があり、その確率は である。よってこの場合の寄与は である。
以上よりである。これは の結果とも一致する。
直前まで1行内に閉じ込められていた場合、外側の成分を1つ増やすと
行列式が0でなくなる。列の場合も同様である。
別解
解法2
方針
(1) (2) は短い列と第1行だけを使う列を直接数える。(3) は、最初から第k回まで正則にならない札の列全体を数える。全ての接頭列が特異であるための必要十分条件は、選ばれた成分の位置が1本の行または1本の列に含まれることである。行・列4本の列を包除して生存確率を求め、第n-1回までの生存確率から第n回までの生存確率を引く。
解答
(1)
2回目で初めて正則になる列は、2つの対角位置または2つの反対角位置を順序をつけて選ぶ4列である。よってである。3回目で初めて正則になる列は、同じ成分を2回選んだ4列から反対側を選ぶ4列と、1行または1列の2成分を選んだ8列から外側を選ぶ16列である。したがってとなる。
(2)
第1行の2成分だけを使う列は 列であり、そのうち一方だけを使う2列を除けばよい。したがってである。
(3)
第 回まで一度も正則にならないための必要十分条件は、それまでに選んだ成分の位置が1本の行または1本の列に含まれることである。実際、この状態なら行列式は常に0である。逆に初めて1本の行・列に収まらなくなる瞬間には、直前の2成分を含む行または列の外側が選ばれ、できた 小配置の行列式は0でない。
固定した1本の行または列だけを使う長さ の列は 列で、行・列は合わせて4本ある。ただし1つの成分だけを使う4列は、その成分を含む行と列で2回ずつ数えている。したがって、第 回まで正則にならない列は列であり、その確率を とするとである。
第 回で初めて正則になる確率はとなる。
総評
「初めて正則になる」条件を、直前までの非正則な履歴として分類する問題である。目安時間は28分。行列式を直接追い続けるより、正の成分の位置が1つの行・列に閉じ込められている限り非正則で、そこから外へ出ると正則になる、という構造で見るとよい。ただし、1成分だけが繰り返し選ばれている場合は、(2) の には含まれないため別に足す必要がある。 の20通りを丁寧に数えておくと、一般式の係数 の意味も確認しやすい。