方針
を成分でおいてとを実際に掛け,等しい成分からの形を絞る。そこで得られるという表示を(2)と(3)の共通の土台にする。(2)では2つの行列をどちらもとの式に直せば,積の順序を入れ替えても同じ式になる。(3)ではを先に求め,をの係数との係数の2条件に分けて解く。最後に得た候補がすべて条件を満たすことも確認する。
解答
(1) とおく。このときであり,である。より成分を比べると を得る。ほかの成分の等式はこの2式から従う。
したがってである。よって,とすれば,と表せる。
(2)
(1)より,ある実数を用いて と書ける。は単位行列なので,,である。よって であり,同じ計算で となる。右辺は一致するから である。
(3)
(1)より と書ける。まずである。したがって より となる。
ここでとは一次独立である。実際,なら,非対角成分から,さらに対角成分からである。よってとなるための条件は である。
第1式は である。 のとき,第2式よりなので である。 のとき,第2式より なので である。したがって を得る。
以上より求める行列はである。これらは上のの4組から得られており,いずれもかつを満たす。
別解
解法2
方針
の2つの固有方向を基底に選ぶ。可換する行列は各固有方向を保つので対角化され、(1)(2)(3)を同じ対角成分の計算で処理する。
解答
(1)
の固有値はより である。それぞれの固有ベクトルとしてをとる。
とする。 だからしたがって も固有値2の固有方向にあり、 と書ける。同様に と書ける。とおけばゆえに は 上で と同じ作用をする。
この2ベクトルは一次独立だからである。
(2)
は上の基底でともに対角行列となる。対角行列どうしは可換だからである。
(3)
同じ基底で の対角成分を とすれば、
はと同値である。4通りの を上の に戻すとを得る。
総評
行列の可換条件を成分比較で完全に絞り込む問題。難度は標準上位で,目安時間は20分から25分程度。採点上は,(1)でとを省略せずに書き,,からへつなげる部分が土台になる。(2)は抽象的に見えるが,(1)の表示に戻せば積の係数が同じになるだけである。(3)ではを使った後,との係数を比較してよい理由を一言添えると答案が安定する。の分岐で符号を取り違えるミスが出やすい。
成分比較と固有方向の2経路を用意した。後者では固有値が相異なるため可換行列が各固有空間を保つことが核心である。