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京都大学 1994年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第1問

ABCEは2行2列の行列で,
A=(1120)E=(1001)とする。

(1) AB=BAならばB=pA+qEとなる実数pqが存在することを示せ。

(2) AB=BAAC=CAが成り立つならば,BC=CBが成り立つことを示せ。

(3) AB=BAB2=Eを満たす行列Bをすべて求めよ。

難易度6/ 10計算量6/ 10目安25

行列 式変形、計算整理、場合分け

方針

Bを成分でおいてABBAを実際に掛け,等しい成分からBの形を絞る。そこで得られるB=pA+qEという表示を(2)と(3)の共通の土台にする。(2)では2つの行列をどちらもAEの式に直せば,積の順序を入れ替えても同じ式になる。(3)ではA2=A+2Eを先に求め,B2=EAの係数とEの係数の2条件に分けて解く。最後に得た候補がすべて条件を満たすことも確認する。

解答

(1) B=(xyzw)とおく。このときAB=(1120)(xyzw)=(x+zy+w2x2y)であり,BA=(xyzw)(1120)=(x+2yxz+2wz)である。AB=BAより成分を比べると z=2y,x=y+w を得る。ほかの成分の等式はこの2式から従う。

したがってB=(w+yy2yw)=y(1120)+w(1001)=yA+wEである。よってp=yq=wとすれば,B=pA+qEと表せる。

(2)
(1)より,ある実数p,q,r,sを用いて B=pA+qE,C=rA+sE と書ける。Eは単位行列なので,AE=EA=AE2=Eである。よって BC=(pA+qE)(rA+sE)=prA2+(ps+qr)A+qsE であり,同じ計算で CB=(rA+sE)(pA+qE)=rpA2+(rq+sp)A+sqE となる。右辺は一致するから BC=CB である。

(3)
(1)より B=pA+qE と書ける。まずA2=(1120)2=(3122)=A+2Eである。したがって B2=(pA+qE)2=p2A2+2pqA+q2E より B2=(p2+2pq)A+(2p2+q2)E となる。

ここでAEは一次独立である。実際,αA+βE=Oなら,非対角成分からα=0,さらに対角成分からβ=0である。よってB2=Eとなるための条件は p2+2pq=0,2p2+q2=1 である。

第1式は p(p+2q)=0 である。 p=0のとき,第2式よりq2=1なので (p,q)=(0,1),(0,1) である。 p=2qのとき,第2式より 2(2q)2+q2=9q2=1 なので q=±13,p=23 である。したがって (p,q)=(23,13),(23,13) を得る。

以上より求める行列はB=E,B=E,B=2AE3,B=2A+E3である。これらは上の(p,q)の4組から得られており,いずれもAB=BAかつB2=Eを満たす。

別解

解法2

方針

A の2つの固有方向を基底に選ぶ。可換する行列は各固有方向を保つので対角化され、(1)(2)(3)を同じ対角成分の計算で処理する。

解答

(1)
A の固有値はdet(AλE)=(1λ)(λ)2=(λ2)(λ+1)より 2,1 である。それぞれの固有ベクトルとしてu=(11),v=(12)をとる。

AB=BA とする。Au=2u だからA(Bu)=B(Au)=2Bu.したがって Bu も固有値2の固有方向にあり、Bu=αu と書ける。同様にBv=βv と書ける。p=αβ3,q=α+2β3とおけば2p+q=α,p+q=β.ゆえに pA+qEu,v 上で B と同じ作用をする。
この2ベクトルは一次独立だからB=pA+qEである。

(2)
B,C は上の基底でともに対角行列となる。対角行列どうしは可換だからBC=CBである。

(3)
同じ基底で B の対角成分を α,β とすれば、
B2=Eα2=β2=1と同値である。4通りの (α,β) を上の p,q に戻すとB=E,E,2AE3,2A+E3を得る。

総評

行列の可換条件を成分比較で完全に絞り込む問題。難度は標準上位で,目安時間は20分から25分程度。採点上は,(1)でABBAを省略せずに書き,z=2yx=y+wからB=yA+wEへつなげる部分が土台になる。(2)は抽象的に見えるが,(1)の表示に戻せば積の係数が同じになるだけである。(3)ではA2=A+2Eを使った後,AEの係数を比較してよい理由を一言添えると答案が安定する。p(p+2q)=0の分岐で符号を取り違えるミスが出やすい。

成分比較と固有方向の2経路を用意した。後者では固有値が相異なるため可換行列が各固有空間を保つことが核心である。

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出典: 京都大学 1994年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。