Evolton

東北大学 1993年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第1問

行列A=(1a01) (a0)
E=(1001)
N=AnEnは自然数)について,次の問に答えよ.

(1) {}N2(E+N)(EN)を求めよ.

(2) {}ENが逆行列をもつことを示し,(EN)1を求めよ.

(3) {}等式X2=Nを満たす行列X=(xyzw)
存在しないことを証明せよ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

行列 背理法、計算整理

方針

まず An を帰納法または上三角行列の形から求め、N が右上成分だけをもつ行列であることを確認する。このとき N2=O なので、(E+N)(EN)=E がすぐ従い、逆行列も決まる。最後は X2=N を成分比較し、右上成分が na0 であることから x+w0 を引き出して矛盾させる。

解答

(1)

まずA=(1a01)であるから、自然数 n についてAn=(1na01)である。これは n=1 では明らかで、n から n+1 への積でも右上成分が na+a=(n+1)a となるため、帰納法で示せる。

したがってN=AnE=(0na00)である。よってN2=(0000)である。また (E+N)(EN)=EN2=E である。

(2)

(1) より (E+N)(EN)=E である。さらに行列の積の順序を逆にしても (EN)(E+N)=EN2=E である。したがって EN は逆行列をもち、(EN)1=E+N=(1na01)である。

(3)

仮にX=(xyzw)X2=N を満たすとする。成分を計算するとX2=(x2+yzy(x+w)z(x+w)zy+w2)である。これがN=(0na00)に等しいので x2+yz=0,y(x+w)=na, z(x+w)=0,zy+w2=0 が成り立つ。

ここで a0 かつ n は自然数だから na0 である。したがって y(x+w)=na0 より x+w0 である。すると z(x+w)=0 から z=0 である。

これを x2+yz=0zy+w2=0 に代入すると x2=0,w2=0 であるから x=0,w=0 となる。すると x+w=0 となり、先ほど得た x+w0 に矛盾する。

よって X2=N を満たす行列 X は存在しない。

別解

解法2

方針

A=E+K, K2=O と見て An=E+nK を出す。(3)では X2=N なら detX=0 かつ tr(X2)=0 となることを使う。2次正方行列の恒等式 X2(trX)X+(detX)E=O を成分で確認し、X2=O という矛盾を得る。

解答

(1) K=(0a00)とおけば A=E+KK2=O である。積を展開すると2次以上の K は消えるのでAn=(E+K)n=E+nK=(1na01).したがってN=nK=(0na00),N2=O.よって(E+N)(EN)=EN2=E.(2)

同様に (EN)(E+N)=E も成り立つから(EN)1=E+N=(1na01).(3)

仮に X2=N とする。行列式を取ると(detX)2=detN=0だから detX=0 である。また tr(X2)=tr(N)=0 である。X=(xyzw)についてtr(X2)=x2+w2+2yz=(x+w)22(xwyz).detX=xwyz=0 なので (x+w)2=0、すなわち trX=x+w=0 である。

2次正方行列では成分計算によりX2(trX)X+(detX)E=Oが成り立つ。ここへ trX=0,detX=0 を入れると X2=O となる。しかしN=(0na00)Oである。実際 n は自然数、a0 だから na0 である。矛盾より、そのような X は存在しない。

総評

上三角行列のべきと、成分比較による不可能性を組み合わせる問題。An の右上成分が na になることを確認すれば、N2=O から(1)(2)は一気に進む。(3)では、na0 を使って x+w0 を先に出すのが重要である。その後 z=0x=w=0 と進めると矛盾がはっきりする。a0 の条件を使い忘れると最後の論理が弱くなる。 成分比較と2次行列の恒等式という独立な矛盾の作り方を収録し、na0 の使用箇所を明示した。

冊子PDFで見る東北大の行列の問題で問題集を作る

出典: 東北大学 1993年度 前期日程 第2次学力試験 理系 前期 第1問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。