Evolton

東北大学 2011年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第6問

行列A=(3−14−1)の表す1次変換をfとする.
fによる点P(1,1)の像をP1とする.
正の整数nに対し,Pnのfによる像をPn+1とする.
Pnが点Q(10,10)に最も近くなるときのnの値を求めよ.

難易度5/ 10計算量4/ 10目安18分

行列、数列、図形と方程式 漸化式の変形、式変形、微分による最大最小

方針

行列 A は単位行列 I に、2乗すると零行列になる行列 N を足した形 A=I+N で表せる。N2=O なら二項展開で An=I+nN となるので、初期点 (1,1) の n 回後の座標を直接求められる。あとは点 Q(10,10) までの距離の2乗を n の2次式にし、正の整数 n で最小となる値を調べる。別解として、座標の漸化式から Pn=(n+1,2n+1) を帰納法で出しても同じ距離最小化に進める。

解答

問題の点 P(1,1) を P0 と書くことにする。すると Pn は P0 に行列 A を n 回作用させた点である。A=(3−14−1)=I+N,N=(2−14−2)とおく。このときN2=(2−14−2)(2−14−2)=(4−4−2+28−8−4+4)=(0000)である。したがって N2=O であり、n≧1 について An=(I+N)n=I+nN となる。実際、二項展開で N2 以上の項がすべて零行列になるからである。

初期点を列ベクトルで(11)と書くとN(11)=(2−14−2)=(12)である。よってAn(11)=(I+nN)(11)=(11)+n(12)=(n+12n+1)である。したがって Pn=(n+1,2n+1) である。

点 Q(10,10) までの距離の2乗を dn2 とするとdn2=(n+1−10)2+(2n+1−10)2=(n−9)2+(2n−9)2=n2−18n+81+4n2−36n+81=5n2−54n+162である。平方完成すると 5n2−54n+162=5(n−275)2+845 である。実数 n では n=27/5=5.4 に最も近いところで最小となる。正の整数 n では候補は 5,6 である。

実際に比べると d52=(5−9)2+(10−9)2=16+1=17 であり、d62=(6−9)2+(12−9)2=9+9=18 である。したがって最も近くなるのは n=5 のときである。

別解

解法2(座標漸化式と帰納法)

方針

行列の累乗を先に求めず、Pn=(xn,yn) の2本の座標漸化式を立てる。初項から xn=n+1, yn=2n+1 を予想して数学的帰納法で証明し、点 Q までの距離の2乗を隣接整数で比較する。

解答

問題の点 P(1,1) を P0 とおき、Pn=(xn,yn)とする。行列 A の作用から{xn+1=3xn−yn,yn+1=4xn−ynである。

ここでPn=(n+1, 2n+1)(1)と予想する。n=0 では P0=(1,1) だから正しい。また、(1)が n で成り立つと仮定するとxn+1=3(n+1)−(2n+1)=n+2,yn+1=4(n+1)−(2n+1)=2n+3=2(n+1)+1である。よって数学的帰納法により (1) はすべての n≧0 で成り立つ。

点 Q(10,10) までの距離の2乗はdn2=(n−9)2+(2n−9)2=5n2−54n+162である。差を取るとdn+12−dn2=10n−49だから、n≦4 では減少し、n≧5 では増加する。したがって最小となる正の整数はn=5(答)である。実際、d52=17<18=d62 である。

総評

目安時間は18分。主解法では A=I+N, N2=O を見抜き、二項展開から An=I+nN を出せるかが中心である。別解では座標漸化式から一般項を予想し、帰納法の仮定と次段の計算を明示する。どちらの方法でも P1 が最初の像であることに注意し、元の点を P0 と置くと添字が整う。最後は実数上の頂点だけで終えず、正の整数 n について隣接値または階差を比較する必要がある。

東北大学 理系数学 前期 過去問10年 2017–2026年度問題編68ページ・解答編133ページ 1,980円税込購入する

冊子PDFで見る東北大の行列の問題で問題集を作る

出典: 東北大学 2011年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。