方針
(1) は行列の恒等式から左下成分の漸化式を得る。(2)では D=ad−bc が法 p で0か否かに分ける。D≡0 なら逆向きにたどり、D≡0 なら cn+1≡(a+d)cn と trace の非零性を使って c1 まで戻す。
解答
(1) 単位行列を I とする。成分を計算するとA2−(a+d)A+(ad−bc)I=Oである。これに An を掛け、左下成分を比較すれば、n≧0 についてcn+2−(a+d)cn+1+(ad−bc)cn=0を得る。
(2) T=a+d,D=ad−bc とおき、法 p で考える。仮定は T≡0 である。
まず D≡0 の場合、漸化式を Dcn=Tcn+1−cn+2 と書ける。ck≡ck+1≡0 から前向きに cn≡0 (n≧k) を得る。また D≡0 なので逆向きにも ck−1,ck−2,… が順に0となる。
次に D≡0 の場合、漸化式は cn+2≡Tcn+1 となる。したがって n≧1 で cn≡Tn−1c1 である。T≡0 であり ck≡0 だから c1≡0 となり、すべての n≧1 で cn≡0 である。また c0=0 である。
いずれの場合も、すべての n≧0 について cn は p で割り切れる。
別解
解法2
方針
法 p の行列として、行列式が0か否かで分ける。可逆な場合は上三角行列の逆を使い、行列式0の場合は A2≡(a+d)A から全べきの形を直接求める。
解答
(1) A2−(a+d)A+(ad−bc)E=Oを直接確認し、両辺に An を掛けて左下成分を比較すればcn+2−(a+d)cn+1+(ad−bc)cn=0(n≧0)を得る。
(2)
T=a+d, D=ad−bc とし、法 p で考える。
D≡0 のとき A は可逆である。ck≡ck+1≡0 だから Ak,Ak+1 は上三角行列であり、A=Ak+1(Ak)−1も上三角行列となる。よってすべての An の左下成分は0である。
D≡0 のとき、(1)の行列恒等式はA2≡TAとなる。帰納的にAn≡Tn−1A(n≧1)であり、cn≡Tn−1c1.仮定より T≡0 なので、k≧1 なら
ck≡0 から c1≡0 を得る。k=0 なら仮定に
c1≡0 が含まれる。したがってこの場合もすべての cn が0である。
以上より、すべての n≧0 について p∣cn である。
総評
文系版より仮定が繊細な論証問題で、目安は18分。行列式が法 p で0の場合には逆向きに割れないため、その場合を分けて trace の非零性を使うことが決定的である。
行列式が0の場合と非0の場合を必ず分ける。特に行列式0ではトレースが法 p で非零という仮定が決定的である。
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出典: 京都大学 1994年度 後期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。