Evolton

京都大学 2007年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第1問

以下の各問にそれぞれ答えよ。

(1) A=(2411),E=(1001)とするとき、A6+2A4+2A3+2A2+2A+3Eを求めよ。

(2) 四角形ABCDを底面とする四角錐OABCDを考える。点Pは時刻0では頂点Oにあり、1秒ごとに次の規則に従ってこの四角錐の5つの頂点のいずれかに移動する。

規則:点Pのあった頂点と1つの辺によって結ばれる頂点の1つに、等しい確率で移動する。

このとき、n秒後に点Pが頂点Oにある確率を求めよ。

難易度4/ 10計算量4/ 10目安20

行列確率 帰納的定義の利用、確率漸化式、計算整理

方針

(1) はまず行列の2乗を直接計算し、A2=A2E という2次の関係式を得る。この関係を繰り返し使えば、A3,A4,A6 をすべて AE の一次式に落とせるので、最後に係数を集める。(2)は頂点 O にいるか、底面の4頂点のいずれかにいるかだけを区別すればよい。O からは次に必ず底面へ移り、底面の頂点からは3本の辺のうち1本だけが O に向かうため、pn+1=13(1pn) という1本の漸化式に閉じる。定数解を引いて等比数列に直し、初期条件 p0=1 を代入する。

解答

(1)

まずA2=(2411)(2411)=(0413)である。一方A2E=(0413)だから A2=A2E である。これを順に用いるとA3=A(A2E)=A22A=A2E,A4=A(A2E)=A22A=3A+2E,A6=(A3)2としてもよいが、A5=A(3A+2E)=3A2+2A=A+6E,A6=A(A+6E)=A2+6A=5A+2Eとなる。したがってA6+2A4+2A3+2A2+2A+3E=(5A+2E)+2(3A+2E)+2(A2E)+2(A2E)+2A+3E=A+Eである。よって求める行列はA+E=(3410)である。

(2) n 秒後に点 P が頂点 O にある確率を pn とする。初期状態より p0=1 である。

頂点 O は底面の4頂点と辺で結ばれているので、O にいる点は次の1秒で必ず O 以外へ移る。また、底面の各頂点から出る辺は、頂点 O へ向かう1本と、底面上の隣の2頂点へ向かう2本の合計3本である。したがって、n 秒後に O 以外にいる確率 1pn のうち、次に O へ移る確率は 13 であるから pn+1=13(1pn) を得る。

この漸化式の定数解を r とすると r=13(1r) より r=14 である。よってpn+114=13(1pn)14=13(pn14)となる。したがってpn14=(13)n(p014)=34(13)nである。ゆえに pn=14+34(13)n である。

5頂点を「O」と「底面」の2状態へまとめると、漸化式が1本に閉じる。

別解

解法2(多項式の剰余と2状態行列)

方針

(1) ではAが満たす2次式を法として与式の多項式を1次式へ還元する。(2)ではOと底面の2状態の遷移行列を作り、一定の成分と毎回1/3倍される差の成分に分ける。

解答

(1) A2A+2E=Oである。したがって多項式F(t)=t6+2t4+2t3+2t2+2t+3t2t+2で割った余りだけを求めればよい。関係t2t2(modt2t+2)を順に用いるとt3t2,t43t+2,t65t+2.よってF(t)t+1(modt2t+2).したがってF(A)=A+E=(3410).(2)

n秒後にOにいる確率と底面にいる確率を並べた列ベクトルをvn=(pn1pn)とする。遷移はvn+1=(013123)vn,v0=(10).変化しない成分は(1434)である。また、直接掛ければ(013123)(11)=13(11)である。そこで初期ベクトルをv0=(1434)+34(11)と分ければvn=(1434)+34(13)n(11).第1成分からpn=14+34(13)nを得る。

総評

難度4、計算量4。(1)は高次の行列を掛け続けず、A2=A2Eで次数を落とす。(2)は5頂点をOと底面の2状態へまとめるのが本質である。確率漸化式と2状態遷移行列の2解法を収録した。p0=1、底面からOへ戻る確率が13である根拠を明記したい。15分から20分が目安である。

冊子PDFで見る京大の行列の問題で問題集を作る

出典: 京都大学 2007年度 前期 数学(文系)(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。