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九州大学 1984年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第1問

行列A=(abcd)に対して,
A2=AAA3=A2Aとする.

(1) A2=Eを満たすとき,a+dがとりうる値をすべて求めよ.ただし,Eは単位行列である.

(2) A3=Aを満たすとき,a+dがとりうる値をすべて求めよ.

難易度7/ 10計算量7/ 10目安25

行列 場合分け、恒等式比較、計算整理

方針

(1)A2=E を成分で直接書き、a+d0a+d=0 に分ける。(2) は2次行列に成り立つ恒等式 A2(a+d)A+(adbc)E=0 を直接計算で使い、s=a+d, q=adbc と置いて A3=A の条件を整理する。AE の定数倍である場合とそうでない場合を分ける。

解答

(1) A=(abcd)とする。A2=E を成分で書くと a2+bc=1, b(a+d)=0, c(a+d)=0, d2+bc=1 である。

もし a+d0 なら、上の第2式と第3式から b=0,c=0 である。したがって a2=1,d2=1 となる。この場合、a+d0 なので a+d=2または2 である。

一方、a+d=0 の場合も実際に起こる。例えばA=(1001)A2=E を満たし、a+d=0 である。

よって a+d がとりうる値は 2, 0, 2 である。

(2)
2次行列について、直接計算すると A2(a+d)A+(adbc)E=0 が成り立つ。そこで s=a+d,q=adbc とおくと A2=sAqE である。さらに両辺に A を掛けると A3=sA2qA=s(sAqE)qA=(s2q)AsqE となる。

条件 A3=A より (s2q1)AsqE=0 である。

まず AE の定数倍である場合を考える。A=λE とすると λ3E=λE なので λ3=λ である。よって λ=1, 0, 1 となり、s=a+d=2λ=2, 0, 2 が得られる。

次に、AE の定数倍でない場合を考える。このとき (s2q1)AsqE=0 で、もし A の係数が 0 でなければ AE の定数倍になってしまう。したがって s2q1=0,sq=0 である。 s=0 なら a+d=0 である。q=0 なら s2=1 なので s=1, 1 である。

以上より候補は 2, 1, 0, 1, 2 である。これらは実際にすべて起こる。例えば(1001),(1000),(0000),(1000),(1001)はいずれも A3=A を満たし、和 a+d は順に 2,1,0,1,2 である。

したがって a+d がとりうる値は 2, 1, 0, 1, 2 である。

2次行列の恒等式で、条件を s,q の場合分けへ落とす

別解

解法2

方針

s=a+d, q=adbc と置き、直接確かめられる
A2=sAqE を使う。(1) はそのまま成分条件を読む。
(2) は q0 なら A が逆行列をもつことを利用して (1) に帰着し、
q=0 なら A2=sA から s を決める。

解答

(1)
A2=E の非対角成分からb(a+d)=0,c(a+d)=0.s=a+d0 なら b=c=0a2=d2=1 なので
s=±2。また s=0
(1001) で実現する。
よってs=2,0,2.(2)
q=adbc0 なら A は逆行列をもち、
A3=A の両辺に A1 を掛けて A2=E
よってこの場合は s=2,0,2 である。

q=0 の場合、直接計算で成り立つA2=sAqEA2=sA となる。したがって A3=s2A
A3=A より、A=0 なら s=0A0 なら
s2=1 だから s=±1 である。
各値は対角行列で実現するので、答えは2,1,0,1,2である。

総評

2次行列の成分計算を、場合分けで最後まで押し切る問題である。目安時間は25分。(2) は A2sA+qE=0 を使うと見通しがよく、候補を出した後に実例で「とりうる」ことまで確認する。 2つの解法を相互に照合し、境界値・必要十分性・符号・最終値を確認した。

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出典: 九州大学 1984年度 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。