方針
表の枚数 K ごとに X=aK と書き、E(X) と E(X2) を二項定理で求める。分散公式へ代入した後、値域は h(a)=2(1+a2)/(1+a)2 を平方の形に変えて決める。
解答
(1)
表が k 枚出る確率はP(K=k)=2mmCk(k=0,1,…,m)である。よって二項定理からE(X)=k=0∑mak2mmCk=2m(1+a)m,E(X2)=k=0∑ma2k2mmCk=2m(1+a2)m.したがって{E(X)}2V(X)={E(X)}2E(X2)−1=(1+a)2m2m(1+a2)m−1.E(X)>0 だからE(X)V(X)=(1+a)2m2m(1+a2)m−1.(2)h(a)=(1+a)22(1+a2)とおくとh(a)=1+(a+1a−1)2.a>0 では−1<a+1a−1<1だから1≦h(a)<2.左端は a=1 で実現する。右端は a→0+0 または a→∞ で近づくが、有限の正の a では実現しない。よって0≦E(X)V(X)<2m−1.
別解
解法2:硬貨ごとの積として期待値を求める
方針
各硬貨に対し、表なら a、裏なら1をとる確率変数を置くと X はそれらの積になる。独立性により期待値が積に分かれるので、和を展開せずに E(X) と E(X2) を得る。値域は微分で確認する。
解答
(1)
i 番目の硬貨についてYi={a1(表),(裏)とおくとX=Y1Y2⋯Ym.各 Yi は独立であり、E(Yi)=21+a,E(Yi2)=21+a2.したがってE(X)={E(Y1)}m=(21+a)mであり、E(X2)={E(Y12)}m=(21+a2)m.これをV(X)=E(X2)−{E(X)}2へ代入するとE(X)V(X)=(1+a)2m2m(1+a2)m−1.(2)h(a)=(1+a)22(1+a2)とおく。微分するとh′(a)=(a+1)34(a−1).よって 0<a<1 で減少し、a>1 で増加する。最小値はh(1)=1であり、a→0+0limh(a)=a→∞limh(a)=2.ただし a>0 では h(a)=2 にならない。したがって1≦h(a)<2であり、求める範囲は0≦E(X)V(X)<2m−1.
総評
難度6、計算量6。二項分布の確率変数に対して平均と標準偏差の比を調べる問題で、想定時間は25分程度。分散を求める際は E(X2) と {E(X)}2 を混同しないこと、値域の上端 2 は極限で近づくだけで含まれないことが重要である。二項定理と独立な積の期待値を相互照合した。
冊子PDFで見る九大の確率の問題で問題集を作る
出典: 九州大学 1989年度 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。