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名古屋大学 1989年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第3問

(1) A=(abbc)の形をした実数の行列で,
A2=Aを満たし
零行列(0000)でも
単位行列(1001)でもないものをすべて求めよ.

(2) 上のような行列Aによって定まる1次変換によって,
平面上のすべての点は,原点を通る一定の直線上にうつされることを証明せよ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

行列図形と方程式 式変形、場合分け、図形的解釈

方針

対称な行列を2乗して成分を比較し、b=0b0 に分ける。零行列・単位行列を除くと、すべての解が a+c=1, b2=ac にまとまる。第(2)問では2本の列ベクトルが比例することから、像が1本の直線上にあると示す。

解答

(1) A=(abbc)とする。A2=A の各成分を比較するとa2+b2=a,b(a+c)=b,b2+c2=c.(1)b=0 のとき、a2=a, c2=c である。零行列と単位行列を除くと(1000),(0001)が残る。

b0 のとき、(1)の中央の式から a+c=1 でありb2=aa2=a(1a)=ac.逆に a+c=1, b2=ac なら (1) の3式がすべて成り立つ。

以上を端点も含めてまとめるとA=(abb1a),b2=a(1a),0a1である。この形では対角成分の和が1なので、零行列にも単位行列にもならない。

(2) 任意の点 (x,y) の像はx(ab)+y(bc)である。0<a<1 なら b0(bc)=ba(ab)だから、像はすべて (a,b) を方向ベクトルとする原点通過直線上にある。

a=1 の端点では Ax 軸への変換、a=0 の端点では y 軸への変換となる。よってすべての場合に、平面上の全点は原点を通る一定の直線上へ移される。

別解

解法2:三角関数で射影の形に表す

方針

成分条件を a=cos2θ, c=sin2θ, b=sinθcosθ と表す。すると行列は1本の単位方向への射影として因数分解でき、第(1)問の分類と第(2)問の像の直線が同時に分かる。

解答

(1) A2=A を成分比較し、零行列・単位行列を除くとa+c=1,b2=ac,a,c0を得る。そこで 0θ<π を用いると、すべての解はA=(cos2θsinθcosθsinθcosθsin2θ)(1)と表せる。実際、sinθcosθ は正負の両方を取り、端点の場合も含む。

(1) を直接2乗するとA2=Aである。また対角成分の和は1だから零行列でも単位行列でもない。

(2) 任意の点を列で表すとA(xy)=(cosθsinθ)(xcosθ+ysinθ).したがって像は常に{t(cosθsinθ)|tR}という原点を通る一定の直線上にある。

総評

難度は10段階中6、計算量は10段階中5。問題文が行列と1次変換を明示しているため、この大問では当時の高校課程の行列を用いる。成分比較では b=0 の端点を落とさないこと、最終形が零行列・単位行列を含まないことを確認したい。第(2)問では、像を作る2本の列が同じ方向を向くこと、または射影の形に表すことが要点である。目安時間は20分。

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出典: 名古屋大学 1989年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。