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名古屋大学 1988年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第1問

ABA22AB+B2=Oを満たす2次の正方行列とする.
ただし,Oは零行列,ABの各成分は実数とする.
このとき,次の(1),(2)を証明せよ.

(1) A33A2B+3AB2B3=O

(2) A=A, B=Bならば,A=Bである.

ただし,AAの行と列とを入れ換えた行列,
BBの行と列とを入れ換えた行列である.
すなわち,A=(abcd)とするとき,
A=(acbd)である.

難易度7/ 10計算量5/ 10目安30

行列論証・証明 式変形、置換、同値変形

方針

与式を Q=A22AB+B2 と置く。(1) の3次式は、積の順序を変えずに AQQB として一度に作れる。(2) では与式を転置した式と比較して AB=BA を示すと、条件が (AB)2=O になる。最後は AB が実対称行列であることを成分に戻して結論する。

解答

(1) Q=A22AB+B2とおく。仮定は Q=O である。積の順序を保ったまま、左から A を掛けた式と右から B を掛けた式を作るとAQ=A32A2B+AB2=O,QB=A2B2AB2+B3=Oである。第1式から第2式を引けばAQQB=A33A2B+3AB2B3=Oとなり、示す式を得る。

(2)

A=AB=B とする。与式を転置すると、積の順序が逆になるのでA22BA+B2=Oである。これと元の式との差を取るとAB=BAを得る。したがってO=A22AB+B2=A2ABBA+B2=(AB)2である。C=AB=(uvvw)とおく。C2=O の左上成分と右下成分からu2+v2=0,v2+w2=0である。各成分は実数なので u=v=w=0。ゆえに C=O、すなわちA=Bである。

別解

解法2:差を置いて交換子を消す

方針

C=AB と置いて A=B+C とする。条件を C2=CBBC に直し、(1) は非可換な積を順序どおり展開して、この関係だけで消去する。(2) では C2 は転置して変わらない一方、CBBC は転置で符号が変わることを利用する。

解答

(1) C=AB,A=B+Cとおく。条件式へ代入して積の順序を保って展開するとO=(B+C)22(B+C)B+B2=BCCB+C2であるからC2=CBBC.(*)求める3次式を B,C で展開するとA33A2B+3AB2B3=B2C2BCB+BC2+CB2+CBC2C2B+C3.() からBC2=BCBB2C,C2B=CB2BCBであり、さらにC3=C(CBBC)=C2BCBC=CB2BCBCBC.これらを代入すると、すべての項が打ち消し合って O となる。

(2)

A,B がともに転置して変わらないなら C=C である。よって C2 も転置して変わらない。一方(CBBC)=BCCB=(CBBC)である。() の両辺を転置した式と元の式を比べるとC2=C2だから C2=O である。C=(uvvw)と書けば、C2=O の対角成分はu2+v2=0,v2+w2=0.したがって u=v=w=0 であり、AB=C=O。ゆえに A=B である。

総評

難度は10段階で7、計算量は10段階で5程度。試験場では25〜30分が目安である。(1) は二項定理を使う問題ではなく、与式を Q として AQQB を作る問題である。行列の積を勝手に交換しないことが最大の採点点になる。(2) は転置によって積の順序が逆になることを明記し、AB=BA を得てから (AB)2=O とする。実対称な2次行列の成分まで書けば、「2乗が零だから元も零」という飛躍を避けられる。

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出典: 名古屋大学 1988年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。