方針
∣z0∣=1 なので z0=eiϕ とおく。z1 が z0 の実数倍になる条件は、ある実数 λ で z1=λz0 と書けること、すなわち 1+Ee−2iϕ=λe−iα である。これは中心 1、半径 E の円と原点を通る直線の交点の存在で示せる。(2)では可能な倍率 λ の2根がすべて ∣λ∣<1 である条件を、2次方程式 ∣λe−iα−1∣=E から求める。
解答
(1) ∣z0∣=1 なので z0=eiϕ とおく。すると z0=e−iϕ であり、z1=eiα(eiϕ+Ee−iϕ)=eiϕeiα(1+Ee−2iϕ)である。z1 が z0 の実数倍であるとは、ある実数 λ に対して z1=λz0 となることである。上の式から、これは eiα(1+Ee−2iϕ)=λ すなわち 1+Ee−2iϕ=λe−iα と同値である。
左辺 1+Ee−2iϕ は、ϕ が動くと中心 1、半径 E の円周を動く。E>1 なので、この円は原点を内部に含む。したがって原点を通り偏角 −α の方向をもつ直線とこの円は2点で交わる。交点に対応する ϕ を取れば、上の等式を満たす実数 λ が存在する。よってそのような z0 は存在する。
(2)
(1)の条件を満たす z0 について z1=λz0 と書ける。λ は実数である。このとき zn+1=eiα(zn+Ezn) において、もし zn=λnz0 なら λ が実数であることから zn+1=λneiα(z0+Ez0)=λn+1z0 となる。したがって zn=λnz0 である。よって ∣zn∣→0 となるための必要十分条件は、(1)で可能なすべての λ について ∣λ∣<1 である。 λ は 1+Ee−2iϕ=λe−iα を満たすので ∣λe−iα−1∣=E である。これを2乗すると (λcosα−1)2+(λsinα)2=E2 より λ2−2λcosα+1=E2 である。したがって可能な λ は λ=cosα±E2−sin2α の2つである。
この2つがともに絶対値 1 未満であるためには −1<cosα−E2−sin2α かつ cosα+E2−sin2α<1 である。すなわち E2−sin2α<1−∣cosα∣ が必要十分である。両辺は正でなければならないので、特に ∣cosα∣<1 である。両辺を2乗して E2−sin2α<(1−∣cosα∣)2 となる。sin2α=1−cos2α を用いて整理すると E2<2(1−∣cosα∣) である。
もともと E>1 であるから、求める範囲は 1<E<2(1−∣cosα∣) である。ただしこの範囲が空でないためには ∣cosα∣<21 が必要である。∣cosα∣≧1/2 のときは条件を満たす E>1 は存在しない。
別解
解法2(実2次行列の固有値)
方針
z=x+iy として漸化式を実2次行列で表す。
z1 が z0 の実数倍になる条件は実固有ベクトルの存在であり、
固有値2個を求めれば、すべての該当初期値で0へ収束する条件が同時に判定できる。
解答
(1)
z=x+iy とすると、写像は(xy)⟼M(xy),M=((1+E)cosα(1+E)sinα(E−1)sinα(1−E)cosα).特性方程式はλ2−2λcosα+1−E2=0.判別式は4(E2−sin2α)>0なので相異なる2つの実固有値と実固有ベクトルをもつ。
固有ベクトルを長さ1に選べば、対応する z0 は ∣z0∣=1 で
z1=λz0 を満たす。
(2)
固有値はλ±=cosα±E2−sin2α.固有ベクトルから始めれば zn=λ±nz0 だから、
全ての該当 z0 で収束する条件は∣λ+∣<1,∣λ−∣<1.これはE2−sin2α<1−∣cosα∣と同値であり、平方してE2<2(1−∣cosα∣).もともと E>1 なので1<E<2(1−∣cosα∣).この区間が空でない条件は∣cosα∣<21⟺3π<α<32π.この角度範囲外では該当する E は存在しない。
総評
難度9、計算量7。z1がz0の実数倍という条件を円と直線の交点、および実2次行列の固有ベクトルとして捉えた。可能な2倍率の双方が絶対値1未満となる条件と、Eの区間が空でない角度条件を明示した。 2つの解法は着眼点を分け、必要性・十分性、端点、等号条件を省略せず記述した。
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出典: 名古屋大学 2000年度 後期 理系 第2問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。