方針
行列そのものより,まずサイズの遷移を見る。 は , は , は , は を表すので,積が定義できる並べ方は長さ の次元列で数えられる。零行列になるかどうかは, が恒等行列で,,一方 であることが本質である。したがって,非零の積では の遷移 の後に の遷移 が現れてはいけない。この禁止条件のもとで,始点と終点のサイズ別に場合分けする。
解答
(1)
行列のサイズだけを見る。各行列は という遷移を表している。積 が定義できるとは,隣り合う行列のサイズがつながるということである。
したがって,最初の行数を2または3から選び,その後の列数を各段階で2または3から選べば,次元列 が決まる。各遷移 に対応する行列は一意に決まる。よって積が定義できる並べ方は 通りである。
(2)
まず零行列になる原因を確認する。 と はそれぞれのサイズの単位行列であり,である。一方であり,これは零行列ではない。
積が 行列になるには,次元列が2から始まり3で終わる必要がある。非零であるためには,途中で の後に が現れてはならない。なぜなら,その間に現れるのはサイズ3の単位行列 だけなので,部分積に が現れ,いずれも により零になるからである。
2から始まり3で終わり,かつ の後に が現れないためには,ある位置で1回だけ が現れ,その前はすべて ,その後はすべて でなければならない。すなわち の形である。 の位置は 番目から 番目までの 通りなので,求める数は である。
(3)
零行列とならない場合を,最初のサイズと最後のサイズで分けて数える。 の場合は,途中で が現れると,最後に2へ戻るためにその後 が必要となり, により零になる。したがってすべて の1通りだけである。 の場合は(2)で数えた通り,1回だけ が現れる形で 通りである。 の場合は,1回だけ が現れ,その前はすべて ,その後はすべて である。 の位置は 通りなので 通りである。 の場合は,まずすべて の1通りがある。ほかにサイズが変わる場合は,先に で へ移り,その後に で へ戻る形だけが非零である。 の位置を , の位置を とすると であり,その選び方は 通りである。この場合の積には が現れるが,これは上で確認した通り零行列ではない。
以上を合計すると,零行列とならない場合の数は である。よって である。
行列の大きさを状態とみなすと,積が定義できる列と非零列を分類できる。
総評
難度7,計算量6。行列の成分計算を大量に行う問題ではなく,サイズを の状態遷移として読む問題である。(1)は長さ の次元列で一気に数えられる。(2)(3)では だが という順序の違いが核心で, の後に が出ると零になる。非零の場合の形を始点・終点別に列挙すると抜けが少ない。特に では,すべて の場合と, が先で が後の 通りを分けて数える。目安時間は25分から30分。