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京都大学 1985年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第2問

平面上の3点ABCと1次変換fについて,下の3条件(A),(B),(C)を仮定する.

(A) ABCは同一直線上にはなく,また原点Oは三角形ABCの内部には属さない.

(B) 3点ABCfによる像は,全体として,3点ABCに一致する,
すなわち{f(A),f(B),f(C)}={A,B,C}

(C) fは恒等変換ではない,すなわちfE

このとき,3点ABCのうちfによって動かないものは,1つあって,1つに限ることを示せ.

難易度7/ 10計算量5/ 10目安30

行列ベクトル 場合分け、背理法、図形的解釈

方針

f が3点を入れ替える置換を作ることから始める。点ごとに全て止まる場合は f=E になるので除外し、非恒等な置換を「1点固定の入れ替え」と「3周期」に分ける。後者では、例えば ABCA として C=sA+tB と置き、1次変換性から A+B+C=0 を導いて原点が重心になる矛盾を作る。

解答

条件(B)より、f は3点 A,B,C を全体として A,B,C に移す。したがって、A,B,C の上には1つの置換が定まる。

もしこの置換が恒等的、すなわち f(A)=A,f(B)=B,f(C)=C であれば、f(BA)=BA,f(CA)=CA である。3点 A,B,C は同一直線上にないので、BACA は平面の2つの独立な方向を与える。よって f はすべてのベクトルを動かさず、f=E となる。これは条件(C)に反する。

したがって、置換としては非恒等である。3個のものの非恒等な置換は、1点を固定し、残り2点を入れ替える場合 または 3点を巡回的に入れ替える場合 のどちらかである。前者なら、固定される点は明らかに1つだけである。よって、後者が起こらないことを示せばよい。

3点を巡回的に入れ替える場合を仮定する。必要なら B,C の名前を入れ替えて、f(A)=B,f(B)=C,f(C)=A としてよい。

まず AB は同じ直線方向のベクトルではない。もし B=λA なら、1次変換性から C=f(B)=f(λA)=λf(A)=λB となり、A,B,C は原点を通る同一直線上に並んでしまうからである。よって A,B を基準にして C=sA+tB と書ける。

この式に f を作用させると f(C)=sf(A)+tf(B)=sB+tC である。一方、巡回の仮定より f(C)=A だから、A=sB+t(sA+tB)=tsA+(s+t2)B となる。A,B は独立なので係数を比べて ts=1,s+t2=0 を得る。後式から s=t2 であり、これを前式に代入すると t3=1 である。実数 t については t=1 であり、したがって s=1 である。ゆえに C=AB すなわち A+B+C=0 が従う。

ところがこれは O=A+B+C3 ということであり、原点 O が三角形 ABC の重心であることを意味する。三角形の重心は内部にあるので、条件(A)の「原点 O は三角形 ABC の内部には属さない」に反する。

したがって3点を巡回的に入れ替える場合は起こらない。残るのは1点だけを固定し、残り2点を入れ替える場合であるから、3点 A,B,C のうち f によって動かないものは、1つあって1つに限る。

別解

解法2

方針

3点上の置換が3周期だと仮定する。すると f3=E であり,重心ベクトル A+B+Cf の不動ベクトルになる。非恒等な実2次元の3周期変換は0以外の不動ベクトルをもたないことを基底表示で示し,原点が重心になる矛盾を得る。

解答

条件(B)により fA,B,C を置換する。3点をすべて固定すれば,独立な BA,CA も固定されて f=E となるので,条件(C)に反する。したがって可能性は「1点固定で他の2点を交換」または「3点を巡回」のどちらかである。

後者を仮定する。このとき f3A,B,C をすべて固定するから,同じ理由でf3=Eである。またf(A+B+C)=A+B+Cだから,U=A+B+C は不動ベクトルである。

ここで UO と仮定し,U と独立なベクトル V を取る。f(U)=U なので,この基底でf(V)=cU+dVと書ける。3回作用させるとf3(V)=c(1+d+d2)U+d3V=Vである。実数 d について d3=1 より d=1,さらに 3c=0 より c=0 となる。よって f(U)=U, f(V)=V であり f=E となって矛盾する。

したがって U=O,すなわちA+B+C=Oである。これは原点が三角形 ABC の重心であることを意味し,条件(A)に反する。ゆえに3周期は不可能であり,残る置換は1点だけを固定して他の2点を交換するものに限る。

総評

難易度は7,計算量は5程度である。想定時間は25分から35分程度。単に「置換だから」と言うだけでは3周期を排除できないため、1次変換性を使って A+B+C=0 を導く部分が得点の中心になる。恒等的に3点を止める場合は f=E になること、重心が内部にあることも省略しない方がよい。巡回の向きは名前を入れ替えればよく、答案では場合分けの入口を明確に書くと読みやすい。

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出典: 京都大学 1985年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。