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京都大学 1997年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第5問

箱の中に1と書かれたカードと3と書かれたカードが合計N枚入れてある.
1回の試行で,箱の中からでたらめに1枚のカードを取り出し,その数字を見た上で,箱の中に戻す.

AB2人がそれぞれ試行を2回または3回行って,
その間に取り出したカードに書かれている数の合計が大きい方を勝ちとするゲームを行う.
ただし,1人が3回の試行を行って,取り出した数の合計が7または9の場合には,その人の得点は0とする規則である.

そこでABはそれぞれ次の作戦でゲームを行うことにした.

A:2回目までの合計が2のときは3回目を行い,4または6のときは3回目を行わない.

B:2回目までの合計が2または4のときは3回目を行い,6のときは3回目を行わない.

1と書かれたカードの枚数をn (0<n<N)とし、p=nNとする.

(1) Aの得点の期待値EABの得点の期待値EBをそれぞれpで表せ.
また,EA>EBとなるためのpの条件を求めよ.

(2) Aの勝つ確率をPABの勝つ確率をPBとするとき:「EA>EBならばPA>PB」といえるか?

難易度8/ 10計算量8/ 10目安30

確率 期待値、状態分類、反例構成

方針

1が出る確率をp3が出る確率をq=1pとおく。まずAとBそれぞれについて、2回目までの和ごとの行動を分け、最終得点の確率分布を表にする。期待値はその表から直接計算し、EAEBを因数分解して条件を出す。(2)では期待値ではなく勝つ確率を比較するので、同じ分布表からPAPBを独立な2人の得点の大小比較として計算する。EA>EBを満たすがPA<PBとなるpを1つ示せば、命題は否定できる。

解答

(1)
3が出る確率を q=1p とおく。

Aは、2回目までの合計が2のときだけ3回目を行う。したがってAの得点分布は次のようになる。得点3456確率p32pqp2qq2実際、最初の2回が1,1なら3回目を行い、3回目が1なら得点3、3なら得点5である。最初の2回の和が4または6ならそこで止まる。

よってEA=3p3+42pq+5p2q+6q2=2p3+3p24p+6である。

Bは、2回目までの合計が2または4のとき3回目を行う。ただし3回行って合計が7または9なら得点は0である。Bの得点分布は得点0356確率2pq2p33p2qq2である。ここで得点0は、最初の2回が1,3または3,1、3回目が3の場合である。

したがってEB=3p3+53p2q+6q2=12p3+21p212p+6である。ゆえにEAEB=10p318p2+8p=2p(1p)(45p)となる。0<p<1より2p(1p)>0だから EA>EB となる条件は 0<p<45 である。

(2)
AとBの得点は独立であり、上の分布表から勝率を比較できる。Aの得点がBの得点より大きい場合を足し、Bの得点がAの得点より大きい場合を引くとPAPB=p3(2pq2)+2pq(2pq2+p3)+p2q(2pq2+p3)+q2(2pq2+p3+3p2q)3p2q(p3+2pq)q2(p3+2pq+p2q).これをq=1pで整理すると PAPB=2p2(1p)2(p24p+2) である。

ここで p=34 とする。このとき0<p<4/5なので、(1)より EA>EB である。一方、p24p+2=9163+2=716<0 であるから PAPB<0 すなわち PA<PB である。

したがって EA>EB ならば PA>PB とはいえない。

別解

解法2

方針

A・Bの得点分布を確率母関数として一つの式にまとめる。期待値は形式的に微分して z=1 を代入し、勝率差は2つの分布の係数を得点順に並べた大小比較表で計算する。作戦ごとの経路を逐一文章で追う解法1とは別に、分布を代数的な対象として処理する。

解答

3が出る確率を q=1p とする。得点 r の確率を zr の係数にした式を作ると、AとBについてFA(z)=p3z3+2pqz4+p2qz5+q2z6,FB(z)=2pq2+p3z3+3p2qz5+q2z6.各係数の和は1であり、これが得点分布を表す。

(1)
期待値はEA=FA(1),EB=FB(1)だからEA=2p3+3p24p+6,EB=12p3+21p212p+6.従ってEAEB=2p(1p)(45p).0<p<1 よりEA>EB0<p<45.(2)
勝率差は、Aの各得点について「それより小さいBの確率」から「それより大きいBの確率」を引いて重み付けすればよい。得点順に係数を代入して整理するとPAPB=2p2(1p)2(p24p+2).ここでp=34を取ると EA>EB である一方、p24p+2=716<0なので PA<PB である。従ってEA>EB ならば PA>PB」とはいえない。

総評

期待値の大小と勝率の大小が一致しないことを、分布表から実際に示す確率問題である。難度は高く、目安時間は30分前後。まず各作戦の「3回目を引く条件」と「3回引いたときの0点規則」を混同せず、得点分布を正しく作ることが最重要である。(2)では期待値の式を流用できないので、独立な2人の得点の大小比較を改めて行う必要がある。反例はp=3/4のようにEA>EBの範囲内で勝率差が負になる値を選べば十分である。

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出典: 京都大学 1997年度 前期 文系・理系 第5問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。