Evolton

京都大学 2007年度 前期日程 第2次学力試験理系(乙)数学 第5問

Aを2次の正方行列とする。列ベクトルx0に対し、列ベクトルx1,x2,xn+1=Axn(n=0,1,2,)によって定める。ある零ベクトルではないx0について、3以上の自然数mで初めてxmx0と一致するとき、行列Amは単位行列であることを示せ。

難易度6/ 10計算量3/ 10目安18

ベクトル行列論証・証明 ベクトル成分計算、背理法、一意性証明、発想重視

方針

Amx0=x0 だけでは、Am が全てのベクトルを固定するとは限らない。そこで x1=Ax0Am で固定されることを使う。最後に x0,x1 が1次独立であることを、最初の帰還時刻が m3 という条件から示す。

解答

仮定よりAmx0=xm=x0である。また x1=Ax0 だからAmx1=AmAx0=A(Amx0)=Ax0=x1である。したがって Amx0,x1 をともに固定する。

ここで x0,x1 が1次独立であることを示す。もし1次従属なら、x00 なので、ある実数 c を用いてx1=cx0と書ける。このとき帰納的に xn=cnx0 である。cm=1 であり c は実数だから、c=1、または m が偶数で c=1 である。

c=1 なら x1=x0 となり、初めて一致する時刻は1である。c=1 なら x2=x0 となり、初めて一致する時刻は2である。どちらも m3 に反する。よって x0,x1 は1次独立である。

任意の2次列ベクトル y は、実数 α,β を用いてy=αx0+βx1と一意に表せる。したがってAmy=αAmx0+βAmx1=αx0+βx1=y.全ての列ベクトルを変えない2次正方行列は単位行列だから、Am は単位行列である。

Amx0だけでなくx1=Ax0も固定する。2本が基底なら結論が出る。

別解

解法2(基底行列を使う)

方針

まずx0,x1の一次独立性を最小周期から示す。この2本を列にもつ行列Bを作れば、AmB=Bとなる。Bが正則なので右から逆行列を掛ける。

解答

仮定からAmx0=x0.またAAmは可換なのでAmx1=AmAx0=A(Amx0)=x1.もしx1=cx0ならxn=cnx0.cm=1cは実数だから、c=1、またはc=1である。前者では1回目、後者では2回目にx0へ戻り、最小のm3に反する。したがってx0,x1は一次独立である。

この2本を列にもつ行列をB=(x0x1)とする。一次独立性によりBは正則である。上の2つの固定関係を列ごとに並べるとAmB=B.右からB1を掛ければAm=Eを得る。

総評

難度6、計算量3。1本のベクトルを固定するだけでは行列は決まらないため、その像x1も固定されることを使う。最小周期m3x0,x1の一次従属を排除するための条件である。任意ベクトルを基底展開する解法と、2本を列にもつ正則行列を使う解法を収録した。18分程度が目安である。

冊子PDFで見る京大のベクトルの問題で問題集を作る

出典: 京都大学 2007年度 前期 数学(理系(乙))(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。