方針
一定値 k を求めるには,任意に取った直交する3方向の単位ベクトルを d に代入して和を取る。各ベクトルの3方向への成分の平方和は長さの平方になるので,3k=3 が出る。互いの直交性は,d=a,d=b,d=c を順に代入し,平方和が0になることから示す。
解答
(1) 空間内に,互いに直交する3つの単位ベクトル e1,e2,e3 を取る。仮定より,d=ei としたときの値はいずれも k である。したがって3k=i=1∑3{(a⋅ei)2+(b⋅ei)2+(c⋅ei)2}=i=1∑3(a⋅ei)2+i=1∑3(b⋅ei)2+i=1∑3(c⋅ei)2である。 e1,e2,e3 は直交する単位ベクトルなので,右辺の各和はそれぞれのベクトルの長さの平方に等しい。よって 3k=∣a∣2+∣b∣2+∣c∣2=1+1+1=3 である。したがって k=1 である。
(2) (1) より,任意の単位ベクトル d に対して (a⋅d)2+(b⋅d)2+(c⋅d)2=1 である。ここで d=a とおくと,a は単位ベクトルだから 1+(b⋅a)2+(c⋅a)2=1 となる。したがって (b⋅a)2+(c⋅a)2=0 である。平方はどちらも0以上なので a⋅b=0,a⋅c=0 を得る。
同じように d=b とおけば (a⋅b)2+1+(c⋅b)2=1 となり b⋅c=0 である。以上より,a,b,c は互いに直交する。
別解
解法2(単位球面の恒等式を拡張する)
方針
まず直交三方向への代入で k=1 を得る。単位ベクトルに対する式を任意ベクトルの長さの恒等式へ直し、a,b,c を順に代入する。
解答
(1)
互いに直交する単位ベクトル e1,e2,e3 を取り、それぞれを d に代入して加える。各単位ベクトルの成分の平方和は1だから3k=∣a∣2+∣b∣2+∣c∣2=3.従って k=1 である。
(2)
任意の零ベクトルでない x に対してd=∣x∣xを代入し、両辺に ∣x∣2 を掛けると(a⋅x)2+(b⋅x)2+(c⋅x)2=∣x∣2.x=a とすれば1+(a⋅b)2+(a⋅c)2=1,従って a⋅b=a⋅c=0 である。さらに x=b とすれば b⋅c=0 も得る。よって三ベクトルは互いに直交する。
総評
難易度は6,計算量は5程度である。想定時間は18分から25分程度。(1) は「任意の単位ベクトル」に3つの直交方向を選んでよいことに気づくのが中心である。成分の平方和が長さの平方になる事実を使うと,k はすぐに1と決まる。(2) は d=a の代入で,すでに1が出ている項以外の平方和が0になる点が重要である。平方和が0なら各項が0,という一言を省かないことが採点上大切である。 解法2では単位球面上の恒等式を任意ベクトルへ拡張し、特別な代入だけで直交性を得る。
冊子PDFで見る九大のベクトルの問題で問題集を作る
出典: 九州大学 1986年度 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。