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九州大学 1988年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第1問

座標平面において,任意の点P(u,v)を直線y=mx (m0)の上へ正射影した点をQ(u,v)とする.

(1) (uv)=A(uv)を満たす行列Aを求めよ.

(2) (1)の行列Aに対して,等式A2=Aを示せ.

(3) (1)の行列Aと単位行列Eの和A+EBとすると,
自然数nに対して,Bn=(2n1)A+Eが成り立つことを示せ.

(4) (3)の行列Bで表される1次変換によって,
直線y=axがそれ自身の上へうつされるように,定数aを定めよ.

難易度6/ 10計算量6/ 10目安20

行列ベクトル図形と方程式 座標設定数学的帰納法図形的解釈

方針

直線の方向ベクトル (1,m) への正射影を内積で表して行列化する。A2=A を図形と積の両方で確認し、帰納法で Bn を示す。(4)は変換後の方向ベクトルが元と平行になる必要十分条件を解く。

解答

(1)
直線 y=mx の方向ベクトルを e=(1,m) とする。点 P(u,v) をこの直線に正射影した点を Q(u,v) とすると、OQe 方向のベクトルであり、OQ=(u,v)(1,m)(1,m)(1,m)(1,m) である。したがって (u,v)=u+mv1+m2(1,m) であり、u=u+mv1+m2,v=m(u+mv)1+m2 となる。よって行列 A は、第1行が (11+m2,m1+m2)、第2行が (m1+m2,m21+m2) の行列である。

(2)
上で得た A に対し、任意の点 (u,v) をまず A で移すと、(u,v)=u+mv1+m2(1,m) となり、これは直線 y=mx 上の点である。この点をもう一度同じ直線に正射影しても点は変わらない。したがって任意の (u,v) に対し A2(u,v)=A(u,v) である。よって A2=A が成り立つ。

式で確認してもよい。M を第1行が (1,m)、第2行が (m,m2) の行列とすると A=11+m2M であり、直接計算で M2=(1+m2)M となる。ゆえに A2=1(1+m2)2M2=11+m2M=A である。

(3) B=A+E である。n=1 のとき B=A+E=(211)A+E で成り立つ。

ある自然数 nBn=(2n1)A+E が成り立つと仮定する。このとき、(2)の A2=A を用いるとBn+1=BnB=((2n1)A+E)(A+E)=(2n1)(A2+A)+A+E=(2n1)(2A)+A+E=(2n+11)A+E.よって数学的帰納法により、すべての自然数 n について Bn=(2n1)A+E が成り立つ。

(4)
直線 y=ax がそれ自身の上へ移されるためには、その方向ベクトル (1,a) が、変換後も同じ直線の方向を向けばよい。すなわち B(1,a)(1,a) と平行であればよい。

まず A(1,a)=1+ma1+m2(1,m) だから B(1,a)=(1,a)+1+ma1+m2(1,m) である。これを成分で書くと B(1,a)=(1+1+ma1+m2,  a+m(1+ma)1+m2) である。

このベクトルが (1,a) と平行である条件はa(1+1+ma1+m2)(a+m(1+ma)1+m2)=0である。左辺を整理すると0=a(1+ma)m(1+ma)1+m2=(1+ma)(am)1+m2.したがって 1+ma=0またはam=0 である。m0 より a=m,a=1m を得る。

実際、a=m の直線は射影先の直線そのものであり、B によって方向は変わらない。また a=1m の直線は y=mx に垂直で、この方向の点は A によって原点へ送られるため、B=A+E ではやはり同じ直線上に残る。

別解

解法2

方針

任意のベクトルを直線方向 (1,m) と垂直方向 (m,1) に分解する。B=A+E が前者を2倍、後者をそのままにすることから、累乗公式と不変な2直線を一度に説明する。

解答

(1) e=(1,m),n=(m,1)と置くと、二つは垂直で長さの2乗はいずれも 1+m2 である。
任意の (u,v) の直線方向成分は(u,v)e1+m2e=u+mv1+m2(1,m).これが正射影だからA=11+m2(1mmm2).(2)
Ae 方向の成分を残し、n 方向の成分を0にする。
一度 A を作用させたベクトルは e 方向なので、もう一度作用させても変わらない。
したがって A2=A である。

(3)
B=A+Ee2e に、nn に移す。
よって任意のベクトルを se+tn と表すとBn(se+tn)=2nse+tn.一方、{(2n1)A+E}(se+tn)=(2n1)se+se+tnも同じである。任意のベクトルに対する像が一致するのでBn=(2n1)A+E.(4)
B は直交する二方向 e,n をそれぞれ別の倍率で移す。
両成分がともに0でない方向は作用後に成分比が変わるため、同じ直線上には残らない。
したがって不変な直線はe=(1,m)方向,n=(m,1)方向だけである。傾きはそれぞれ m,1/m だからa=mまたはa=1m.

総評

正射影の行列表示から始まり、行列の累乗と直線の不変条件まで進む問題である。前半は内積による射影公式を正しく行列化できれば標準的である。(3)では A2=A の利用が中心で、累乗を展開しすぎないことが大切である。(4)は2本の直線が答えになるが、「その2本は確かに成り立つ」だけでは不足で、B(1,a)(1,a) の平行条件からそれ以外がないことを示す必要がある。目安時間は20分。 採点上は、方針の根拠、条件から決まる範囲、境界・等号条件、最終結論を別々に明記したい。 2解法を照合すると、符号や領域の向き、候補の除外を自己検算できる。

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出典: 九州大学 1988年度 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。