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九州大学 2002年度 前期日程 第2次学力試験 行列(問題が明示的に行列を扱う場合、または出題範囲が許す場合のみ)理系数学 第5問(c)

2次の正方行列Aが零行列でなくA2=Aをみたすとき,べき等行列という.
次の問いに答えよ.

(1) 行列A=(abcd)はべき等行列であり,
かつadbc0とする.
このとき,Aを求めよ.

(2) 行列A=(abcd)adbc=0をみたすとする.
このとき,Aがべき等行列であるための必要十分条件をadのみを用いて表せ.

(3) 行列A=(abcd)
B=(efgh)はともにべき等行列とする.
A+Bがべき等行列になるとき,A+Bを求めよ.
また,そのようなABの組を1つあげよ.

難易度6/ 10計算量6/ 10目安20

行列 式変形、必要十分条件、場合分け

方針

(1)adbc0 から逆行列を掛けて A=E を得る。(2)は A2=A を4成分で書き、さらに adbc=0 を使って全成分に共通する因子 a+d1 を取り出す。零行列でない条件から a+d=1 が必要になり、逆も直接確認する。(3)は(1)(2)でべき等行列を分類し、対角成分の和が E なら2、それ以外なら1であることを使う。

解答

(1) adbc0 であるから、A には逆行列が存在する。A2=A の両辺に左から A1 を掛けると A=E である。したがってA=(1001)である。

(2) A=(abcd)とする。A2=A を成分で書くと{a2+bc=a,b(a+d)=b,c(a+d)=c,d2+bc=dである。また仮定より adbc=0 すなわち bc=ad である。

これを上の4式に代入して整理すると{a(a+d1)=0,b(a+d1)=0,c(a+d1)=0,d(a+d1)=0となる。 A がべき等行列なら、定義より零行列ではない。したがって a,b,c,d の少なくとも1つは0でないので、上の4式から a+d1=0 が必要である。すなわち a+d=1 である。

逆に、adbc=0 かつ a+d=1 とする。このとき bc=ad であり a2+bc=a2+ad=a(a+d)=a である。同様に b(a+d)=b,c(a+d)=c,d2+bc=d2+ad=d(a+d)=d となるから A2=A が成り立つ。また a+d=1 なので零行列ではない。

よって必要十分条件は a+d=1 である。

(3)

まず(1)(2)から、べき等行列の対角成分の和を調べる。行列が E なら対角成分の和は 2 である。E でないべき等行列は、(1)より行列式が0であり、(2)より対角成分の和は 1 である。

ここで、もし A=E なら (A+B)2=(E+B)2=E+2B+B2=E+3B である。一方 A+B=E+B なので、A+B がべき等行列なら E+3B=E+B となり B=0 を得る。これは B がべき等行列であることに反する。したがって AE である。同様に BE である。

よって AB はどちらも対角成分の和が 1 である。したがって A+B の対角成分の和は 2 である。 A+B はべき等行列である。もし A+BE なら、上で見た分類により対角成分の和は 1 でなければならない。しかし実際には 2 であるから矛盾する。したがって A+B=E である。

実際にそのような例としてA=(1000),B=(0001)を取れば、A2=AB2=B、かつ A+B=E である。

別解

解法2(2次行列の恒等式)

方針

2次行列が満たす
A2(trA)A+(detA)E=0 を成分計算で確認して用いる。
べき等条件と比較すると、行列式0の非零解は対角和1に分類できる。

解答

2次行列 A について成分を掛ければA2(a+d)A+(adbc)E=0が確かめられる。

(1)
detA0 なら A2=A の両辺に A1 を掛けてA=E.(2)
detA=0 のとき上の恒等式はA2(a+d)A=0.A2=A かつ A0 であるための必要条件は(a+d1)A=0,a+d=1.逆に detA=0, a+d=1 なら恒等式から A2=A であり、
対角和が1なので零行列でもない。よって必要十分条件は a+d=1 である。

(3)
A=E なら (A+B)2=A+BB2=B から 2B=0 となり、
B0 に反する。よって A,BE であり、(2)から両者の対角和は1。
したがって A+B の対角和は2である。

A+B もべき等行列である。これが E でなければ、(2)により
対角和は1でなければならず矛盾する。よってA+B=E.例としてA=(1000),B=(0001)がある。

総評

難度6、計算量6。目安時間は
24〜30分。
主題は行列(問題が明示的に行列を扱う場合、または出題範囲が許す場合のみ)である。解法1では誘導に沿った標準的な答案を、解法2では
異なる見方から全小問を再構成した。採点では、途中の必要条件を十分条件まで戻すこと、
場合分けの境界・等号条件・定義域を明記することが重要である。

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出典: 九州大学 2002年度 前期 理系 第5問(c)(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。