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九州大学 2004年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第2問

2次の正方行列A=(abba)に対して,
次の問いに答えよ.
ただし,abは定数とする.

(1) (a+b)4(ab)4を展開せよ.

(2) A4(a+b)4(ab)4を用いて表せ.

(3) 自然数nに対して,Anを求めよ.

(4) 0<a<1としb=1aとしたときのAn(1,1)成分をxnとする.
極限limnxnを求めよ.

難易度5/ 10計算量5/ 10目安20

行列数列 二項定理、数学的帰納法極限計算

方針

この形の行列を掛けると、対角成分が等しく、非対角成分も等しい形が保たれる。そこで成分を (xyyx) と見て、行和 x+y と差 xy を調べると、それぞれ (a+b)n, (ab)n になる。(2)はこの考えを4乗で確認し、(3)は帰納法で一般の n に広げる。(4)では b=1a から a+b=1, ab=2a1 となり、2a1<1 を使って極限を出す。

解答

(1)

二項展開により (a+b)4=a4+4a3b+6a2b2+4ab3+b4 であり、(ab)4=a44a3b+6a2b24ab3+b4 である。

(2) A と同じ形の行列どうしを掛けると、再び(xyyx)の形になる。A4A4=(XYYX)とおく。

この行列の各行の和は X+Y である。一方、A の各行の和は a+b なので、4回掛けると行和は X+Y=(a+b)4 となる。また、1行目の成分の差は XY であり、A ではその差が ab なので、同様に XY=(ab)4 となる。

したがって X=(a+b)4+(ab)42,Y=(a+b)4(ab)42 である。よってA4=12((a+b)4+(ab)4(a+b)4(ab)4(a+b)4(ab)4(a+b)4+(ab)4)である。

(3)

自然数 n に対してAn=12((a+b)n+(ab)n(a+b)n(ab)n(a+b)n(ab)n(a+b)n+(ab)n)であることを示す。 n=1 のとき、右辺は12((a+b)+(ab)(a+b)(ab)(a+b)(ab)(a+b)+(ab))=(abba)=Aとなり成り立つ。

ある n で成り立つとする。右辺の対角成分を X、非対角成分を Y とすれば X+Y=(a+b)n,XY=(ab)n である。これに A を右から掛けた An+1 の対角成分を X、非対角成分を Y とすると X=aX+bY,Y=bX+aY である。よって X+Y=(a+b)(X+Y)=(a+b)n+1 かつ XY=(ab)(XY)=(ab)n+1 である。したがってX=(a+b)n+1+(ab)n+12,Y=(a+b)n+1(ab)n+12となり、n+1 でも同じ形が成り立つ。以上より公式が示された。

(4) b=1a であるから a+b=1,ab=2a1 である。(3)より、An(1,1) 成分は xn=1n+(2a1)n2=1+(2a1)n2 である。 0<a<1 より 1<2a1<1 であるからlimn(2a1)n=0である。したがってlimnxn=12である。

和方向と差方向

別解

解法2

方針

K=(0110) と置き、A=aI+bKK2=I を使う。二項展開の偶数次・奇数次を分ければ一般の An が直接得られる。

解答

(1) (a+b)4=a4+4a3b+6a2b2+4ab3+b4,(ab)4=a44a3b+6a2b24ab3+b4.(2)K=(0110)と置くと A=aI+bKK2=I である。偶数次と奇数次を分ければA4=12((a+b)4+(ab)4(a+b)4(ab)4(a+b)4(ab)4(a+b)4+(ab)4).(3)
同じ二項展開を一般の n で行うとAn=12((a+b)n+(ab)n(a+b)n(ab)n(a+b)n(ab)n(a+b)n+(ab)n).(4)
b=1a のときxn=1+(2a1)n2.0<a<1 より 2a1<1 だからlimnxn=12.

総評

難度5、計算量5。目安時間は18〜23分。対角化などを持ち出さなくても、行和と成分差を見るだけで十分に解ける。採点上は(3)の一般公式を「同様に」と済ませず、n=1 の確認と帰納法の一歩を示すことが大切である。(4)は 0<a<1 から 2a1<1 が出る点が核心で、2a1 が負の場合でも累乗は0に近づくことを明記したい。

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出典: 九州大学 2004年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。