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九州大学 2023年度 前期日程 一般選抜理系数学 第4問

以下の文章を読んで後の問いに答えよ。

三角関数cosxsinxについては加法定理が成立するが,
逆に加法定理を満たす関数はどのようなものがあるだろうか。
実数全体を定義域とする実数値関数f(x)g(x)が以下の条件を満たすとする。

(A) すべてのxyについてf(x+y)=f(x)f(y)g(x)g(y)

(B) すべてのxyについてg(x+y)=f(x)g(y)+g(x)f(y)

(C) f(0)0

(D) f(x)g(x)x=0で微分可能でf(0)=0g(0)=1

(1) 条件(A),(B),(C)からf(0)=1g(0)=0がわかる。

以上のことから
(2)f(x)g(x)はすべてのxの値で微分可能で,

f(x)=g(x)g(x)=f(x)が成立することが示される。

(3) 上のことから{f(x)+ig(x)}(cosxisinx)=1であることが,

実部と虚部を調べることによりわかる。ただしiは虚数単位である。

よって条件(A),(B),(C),(D)を満たす関数は三角関数f(x)=cosxg(x)=sinxであることが示される。

さらに,abを実数でb0とする。このとき条件(D)をより一般的な

(D)' f(x)g(x)x=0で微分可能でf(0)=ag(0)=b

におきかえて,条件(A),(B),(C),(D)'を満たすf(x)g(x)はどのような関数になるか考えてみる。
この場合でも,条件(A),(B),(C)からf(0)=1g(0)=0が上と同様にわかる。ここでp(x)=eabxf(xb),q(x)=eabxg(xb)とおくと,(4)条件(A),(B),(C),(D)において,

f(x)p(x)に,g(x)q(x)におきかえた条件が満たされる。

すると前半の議論により,p(x)q(x)がまず求まり,
このことを用いるとf(x)=[ ア ],g(x)=[ イ ]が得られる。

(1) 下線部(1)について,f(0)=1g(0)=0となることを示せ。

(2) 下線部(2)について,f(x)がすべてのxの値で微分可能な関数であり,
f(x)=g(x)となることを示せ。

(3) 下線部(3)について,下線部(1),下線部(2)の事実を用いることにより,
{f(x)+ig(x)}(cosxisinx)=1となることを示せ。

(4) 下線部(4)について,条件(B),(D)において,f(x)p(x)に,g(x)q(x)
におきかえた条件が満たされることを示せ。つまりp(x)q(x)が,

(B) すべてのxyについてq(x+y)=p(x)q(y)+q(x)p(y)

(D) p(x)q(x)x=0で微分可能でp(0)=0q(0)=1

を満たすことを示せ。また空欄[ ア ],[ イ ]に入る関数を求めよ。

難易度7/ 10計算量7/ 10目安30

関数微分三角関数 恒等式比較、式変形、誘導利用

方針

加法定理型の条件に、まず x=y=0 を代入して初期値を決める。次に f(x+h)f(x) を条件(A)で展開し、h0 の差分商から任意の x での微分可能性と f(x)=g(x) を示す。(3) では同様に得られる g(x)=f(x) も使い、fcos+gsingcosfsin の2つの実関数が定数であることを示す。一般の a,b では指数因子と変数変換で p,q を標準形に直し、最後に x=bt と戻す。

解答

(1) F=f(0)G=g(0) とおく。条件(A)で x=y=0 とすると F=F2G2 である。また条件(B)で x=y=0 とすると G=2FG である。

もし G0 なら、G=2FG より F=12 である。これを F=F2G2 に代入すると 12=14G2 となり、G2=14 を意味する。これは G が実数であることに反する。したがって G=0 である。

すると F=F2 であり、条件(C)より F0 だから F=1 である。よって f(0)=1,g(0)=0 である。

(2)
任意の実数 x を固定し、h0 に近づける。条件(A)より f(x+h)=f(x)f(h)g(x)g(h) であるから、(1) の f(0)=1 を用いて f(x+h)f(x)=f(x){f(h)1}g(x)g(h) となる。両辺を h で割ると f(x+h)f(x)h=f(x)f(h)f(0)hg(x)g(h)g(0)h である。

条件(D)より fg0 で微分可能で、f(0)=0g(0)=1 である。したがって h0 とすると右辺は f(x)0g(x)1=g(x) に収束する。よって f(x) は任意の x で微分可能であり、f(x)=g(x) が成り立つ。

(3)
同じように条件(B)から g(x+h)g(x)=f(x)g(h)+g(x){f(h)1} である。両辺を h で割って h0 とすれば g(x)=f(x) を得る。

ここで U(x)=f(x)cosx+g(x)sinx,V(x)=g(x)cosxf(x)sinx とおく。f(x)=g(x)g(x)=f(x) を用いると U(x)=f(x)cosxf(x)sinx+g(x)sinx+g(x)cosx=0 であり、V(x)=g(x)cosxg(x)sinxf(x)sinxf(x)cosx=0 である。したがって U(x),V(x) はともに定数である。 x=0 を代入すると、(1) より U(0)=1,V(0)=0 である。よってすべての xU(x)=1,V(x)=0 である。ところが {f(x)+ig(x)}(cosxisinx)=U(x)+iV(x) であるから {f(x)+ig(x)}(cosxisinx)=1 が成り立つ。

(4) p(x)=eabxf(xb),q(x)=eabxg(xb)とおく。まず条件(B)を確認する。任意の x,y について、もとの条件(B)よりg(x+yb)=f(xb)g(yb)+g(xb)f(yb)である。よってq(x+y)=eab(x+y)g(x+yb)=eabxf(xb)eabyg(yb)+eabxg(xb)eabyf(yb)=p(x)q(y)+q(x)p(y)となる。

次に条件(D)を確認する。一般の場合でも f(0)=1g(0)=0 であり、条件(D)'より f(0)=ag(0)=b である。したがって p(0)=abf(0)+1bf(0)=ab+ab=0 であり、q(0)=abg(0)+1bg(0)=0+1=1 である。よって p,q は条件(D)を満たす。

なお、条件(A)についても同じ計算で p(x+y)=p(x)p(y)q(x)q(y) が成り立ち、p(0)=10 であるから条件(C)も満たす。したがって前半の結果を p,q に適用でき、p(x)=cosx,q(x)=sinx である。 x=bt とおくと p(bt)=eatf(t)=cosbt,q(bt)=eatg(t)=sinbt である。したがって f(t)=eatcosbt,g(t)=eatsinbt を得る。変数名を x に戻せば、空欄は [ア] eaxcosbx,[イ] eaxsinbx である。

別解

解法2(複素関数にまとめる方法)

方針

H(x)=f(x)+ig(x) とおくと,条件(A),(B)は H(x+y)=H(x)H(y) の1本にまとまる。原点の微分係数から任意点で H(x)=iH(x) を導き,H(x)(cosxisinx) の導関数が0であることを示す。一般の a,b でも P(x)=p(x)+iq(x) を同様に扱う。

解答

H(x)=f(x)+ig(x) とおく。条件(A),(B)はまとめてH(x+y)=H(x)H(y)(1)と表せる。

(1)
(1) に x=y=0 を代入すると H(0)=H(0)2 である。
条件(C)より H(0)0 だから H(0)=1 であり,f(0)=1,g(0)=0を得る。

(2)
H(0)=f(0)+ig(0)=i である。(1) よりH(x+h)H(x)h=H(x)H(h)H(0)h.h0 とすればH(x)=iH(x).実部を比較して f(x)=g(x),虚部を比較して
g(x)=f(x) を得る。

(3) K(x)=H(x)(cosxisinx)とおく。(cosxisinx)=i(cosxisinx) だからK(x)=iH(x)(cosxisinx)iH(x)(cosxisinx)=0.よって K は定数で,K(0)=1 より{f(x)+ig(x)}(cosxisinx)=1である。

(4)
一般の条件(D)'では H(0)=a+ib である。問題文の p,q に対しP(x)=p(x)+iq(x)=eabxH(xb)とおく。(1) からP(x+y)=P(x)P(y)であり,その虚部を比較すれば条件(B)を得る。またP(0)=1,P(0)=abH(0)+1bH(0)=iだから p(0)=0, q(0)=1 であり,条件(D)も成り立つ。
同様に実部から条件(A),P(0)=1 から条件(C)も成り立つ。

前半の結果によりP(x)=cosx+isinx.x=bt とおくとeat{f(t)+ig(t)}=cosbt+isinbtだからf(x)=eaxcosbx,g(x)=eaxsinbxである。

総評

加法定理を満たす関数を、原点での微分条件から決定する証明問題。目安時間は35〜40分。計算量よりも論理の順序が重要で、初期値、任意点での微分可能性、三角関数との比較、一般形への変換を分けて書くと崩れにくい。(2) では x を固定して h0 とする差分商の形を明示すること、(4) では指数因子と x/b の変数変換が微分条件を標準形に直していることを確認するのが採点の中心である。 問題文に沿って実部・虚部を別々に追う方法に加え,H=f+ig で加法定理と微分を1本にまとめる別証を示した。一般の a,b への変換も同じ枠組みで検算できる。

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出典: 九州大学 令和5年度一般選抜(前期日程)数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。