方針
(1) では zk=xk+yki と置く。偏角が第1象限内にあるので xk,yk≧0 であり、和の絶対値の2乗を展開すると交差項 xjxk+yjyk がすべて非負になる。(2)では zk=cosθk+isinθk と置くと ∣zk∣=1 で、実部の和が条件により1になる。(1)を適用してn≦∣∑zk∣2=1+(∑sinθk)2を得る。正弦の和は非負なので平方根を取れる。
解答
(1) zk=xk+yki とおく。0≦argzk≦π/2 であるから、zk は第1象限またはその境界上にあり、xk≧0,yk≧0 である。
このとき∣z1+z2+⋯+zn∣2=(k=1∑nxk)2+(k=1∑nyk)2である。右辺を展開すると∣z1+⋯+zn∣2=k=1∑n(xk2+yk2)+21≦j<k≦n∑(xjxk+yjyk)=k=1∑n∣zk∣2+21≦j<k≦n∑(xjxk+yjyk).ここで xj,xk,yj,yk はすべて0以上なので、交差項はすべて0以上である。したがって ∣z1∣2+∣z2∣2+⋯+∣zn∣2≦∣z1+z2+⋯+zn∣2 である。
(2) zk=cosθk+isinθk とおく。0≦θk≦π/2 だから、0≦argzk≦π/2 であり、(1)を適用できる。また ∣zk∣=1 である。よって(1)よりn=k=1∑n∣zk∣2≦k=1∑nzk2である。
一方、条件よりk=1∑ncosθk=1であるから、k=1∑nzk=1+ik=1∑nsinθkである。したがってk=1∑nzk2=1+(k=1∑nsinθk)2である。ゆえにn≦1+(k=1∑nsinθk)2となる。 0≦θk≦π/2 なので、∑sinθk≧0である。よって平方根を取ってn−1≦k=1∑nsinθkすなわち n−1≦sinθ1+sinθ2+⋯+sinθn が成り立つ。
第1象限のベクトル和
別解
解法2
方針
各複素数を平面ベクトルとみなし,和の絶対値の二乗を内積で展開する。偏角差が [−π/2,π/2] に入るので,異なる二つのベクトルの内積が非負になる。
解答
(1)
偏角を ϕk=argzk とする。任意の j<k に対して−2π≦ϕj−ϕk≦2πだからRe(zjzk)=∣zj∣∣zk∣cos(ϕj−ϕk)≧0.したがってk=1∑nzk2=k=1∑n∣zk∣2+21≦j<k≦n∑Re(zjzk)≧k=1∑n∣zk∣2.これで (1) が示された。
(2) zk=cosθk+isinθkと置く。各 ∣zk∣=1 であり,(1) と実部の和の条件からn≦k=1∑nzk2=(k=1∑ncosθk)2+(k=1∑nsinθk)2=1+(k=1∑nsinθk)2.正弦の和は非負なのでn−1≦k=1∑nsinθkを得る。
総評
難度5、計算量3。目安時間は12〜16分。(1)は複素数の不等式というより、第1象限にあるベクトル同士の内積が非負であることを展開で示す問題である。各 zk の実部・虚部が非負であるため、和の長さの2乗には非負の交差項が加わる。(2)では、zk=cosθk+isinθk と置くと実部の和がちょうど1になる設計になっている。最後に正弦の和が非負であることを確認してから平方根を取ると、答案として隙がない。
冊子PDFで見る阪大の複素数平面の問題で問題集を作る
出典: 大阪大学 2004年度 前期 理系 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。