Evolton

東北大学 2003年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第1問

実数abcdに対し,
A=(abcd)
E=(1001)とおく.

(1) A2=(αβγδ)のとき,
αδβγ0を示せ.

(2) AA4=Eを満たすならば,
A2=EまたはA2=Eとなることを示せ.

(3) B=(0110)とする.
AA2=EおよびBA=ABを満たすとき,
bcdaの式で表せ.
また,このときAB=AmBAnが成立するような整数の組(m,n)
1m31n3の範囲にあるものをすべて求めよ.

難易度7/ 10計算量7/ 10目安30

行列 計算整理、必要十分条件、場合分け

方針

(1)A2 の行列式が A の行列式の2乗になることを、必要なら成分計算で確認する。(2)では C=A2 とおくと C2=E であり、(1)と (detC)2=1 から detC=1 が従う。C=(pqrs) と置いて C2=E, psqr=1 を成分比較すると C=E または C=E に限られる。(3)は BA=AB から d=a,c=b、さらに A2=E から b2=a2+1 を得る。後半は BA=AB, A2=E, A4=E を使って指数を4周期で調べる。

解答

(1) A2=(αβγδ) とする。行列式を考えると αδβγ=det(A2) である。2次行列については det(A2)=det(A)det(A) であるから αδβγ=(adbc)20 である。

(2) C=A2 とおく。仮定 A4=E より C2=E である。また(1)より detC0 であり、C2=E から (detC)2=detE=1 である。したがって detC=1 である。C=(pqrs)とおく。C2=E より{p2+qr=1,q(p+s)=0,r(p+s)=0,rq+s2=1である。また psqr=1 である。

もし p+s=0 なら s=p であり、psqr=p2qr である。一方 p2+qr=1 なので psqr=1 となり、detC=1 に反する。したがって p+s0 である。すると q(p+s)=0, r(p+s)=0 から q=0,r=0 である。さらに p2=1, s2=1, ps=1 だから (p,s)=(1,1)または(p,s)=(1,1) である。よって C=EまたはC=E である。すなわち A2=EまたはA2=E である。

(3) B=(0110)である。まずBA=(cdab),AB=(badc)である。条件 BA=AB より、成分を比較して c=b,d=a を得る。したがってA=(abba)である。

このときA2=(a2b200a2b2)=(a2b2)Eである。条件 A2=E より a2b2=1 だから b2=a2+1 である。よって b=±a2+1,c=b=a2+1,d=a である。

次に AB=AmBAn を満たす (m,n) を求める。BA=AB より、BA を入れ替えるたびに符号が変わるので BAn=(1)nAnB である。したがって AmBAn=(1)nAm+nB である。一方、AB=A1B であり、右から B を掛けて比較すれば (1)nAm+n=A であればよい。

また A2=E だから A4=E であり、A の累乗は4周期である。 n が偶数なら (1)n=1 なので Am+n=A すなわち m+n1(mod4) が必要である。1m,n3n=2 の場合を調べると m+21(mod4) より m=3 である。 n が奇数なら (1)n=1 なので Am+n=A すなわち Am+n=A=A3 であり、m+n3(mod4) が必要である。n=1 では m=2n=3 では該当する 1m3 はない。

したがって求める組は (m,n)=(2,1),(3,2) である。

A2=E の4周期

別解

解法2

方針

(1) ,(2)では C=A2 の成分と行列式を直接使う。(3)の前半は反交換条件を成分比較し、後半は A,A2,A3,A4 の表を作って9組を合同式ではなく明示的に確認する。

解答

(1) αδβγ=det(A2)=(detA)2=(adbc)20.(2)
C=A2 とおくと C2=E である。(1)と(detC)2=detE=1より detC=1 である。C=(pqrs)とすると、C2=E の非対角成分からq(p+s)=r(p+s)=0.p+s=0 なら、p2+qr=1 に対してdetC=psqr=p2qr=1となり矛盾する。よって p+s0、したがって q=r=0 である。残りの条件から p=s=1 または p=s=1 なのでA2=C=EまたはA2=C=E.(3)
BA=AB の成分比較からc=b,d=a.さらにA2=(a2b2)E=Eよりb=±a2+1,c=a2+1,d=a.A2=E なのでA1=A,A2=E,A3=A,A4=Eが4周期で繰り返される。またAmBAn=(1)nAm+nB.1m,n3 の9組をこの表で照合すると、右辺が AB になるのは(m,n)=(2,1),(3,2)だけである。

総評

難度7、計算量7。目安時間は30〜38分。前半は行列式と成分比較、後半は反交換関係 BA=ABA2=E の計算を組み合わせる問題である。(2)では C2=E だけではなく detC=1 まで使って C=±E に絞る必要がある。(3)の最後は全9通りを力任せに調べてもよいが、BAn=(1)nAnB と4周期を使うと整理できる。符号と指数の合同条件を混同しないことが重要である。

冊子PDFで見る東北大の行列の問題で問題集を作る

出典: 東北大学 2003年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。