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東北大学 2005年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第5問

a,bをa2≠b2を満たす0でない実数とし,
Anを次の関係式で定まる2次の正方行列とする.A1=(0a−100),An+1(0aa0)+(0bb0)An=(100−1)(n=1,2,3,⋯ )(1) 行列C=(xyzw)で
C(0aa0)+(0bb0)C=(100−1)
を満たすものを求めよ.

(2) Anをa,b,nで表せ.

(3) n→∞のときAnのすべての成分が収束するための条件を求めよ.

難易度7/ 10計算量7/ 10目安25分

行列、数列 漸化式の変形、計算整理、範囲評価

方針

まず(1)で、未知行列 C=(x,y;z,w) を直接代入し、4つの成分を比較して定数解を求める。次に Dn=An−C とおくと、右辺が0の漸化式 Dn+1Ma+MbDn=O になる。ここで Ma=(0aa0)、Mb=(0bb0) とおくと、Dn+1=−(b/a)SDnS となり、同じ操作を2回行うと (b/a)2Dn に戻る。奇数番目と偶数番目を分けて An を表し、収束条件は ∣b/a∣<1 で決まる。

解答

(1) C=(xyzw)とおく。またMa=(0aa0),Mb=(0bb0)と書く。直接計算するとCMa=(ayaxawaz),MbC=(bzbwbxby)である。したがってCMa+MbC=(ay+bzax+bwaw+bxaz+by)である。これが(100−1)に等しいので ay+bz=1,ax+bw=0,aw+bx=0,az+by=−1 である。

中央の2式は(abba)(xw)=(00)である。a2≠b2 より、この係数行列の行列式 a2−b2 は0でない。したがって x=w=0 である。

残りの2式は(abba)(yz)=(1−1)である。2式を加えると (a+b)(y+z)=0 であり、a2≠b2 だから a+b≠0 である。よって y+z=0 である。つまり z=−y であり、ay+bz=1 に代入すると (a−b)y=1 となる。a−b≠0 なので y=1a−b,z=−1a−b である。したがってC=(01a−b−1a−b0)である。

(2) Dn=An−C とおく。(1)より CMa+MbC=(100−1) なので、もとの漸化式から Dn+1Ma+MbDn=O を得る。ここでMa−1=(01/a1/a0)であるから Dn+1=−MbDnMa−1 である。S=(0110)とおくと、Mb=bS、Ma−1=(1/a)S である。したがって Dn+1=−baSDnS である。同じ操作をもう一度行うと、S2=I より Dn+2=(ba)2Dn である。

初項はA1=(01/a00)なのでD1=A1−C=(0−ba(a−b)1a−b0)である。またD2=−baSD1S=(0−ba(a−b)b2a2(a−b)0)である。

よって r=0,1,2,… に対してA2r+1=C+(ba)2r(0−ba(a−b)1a−b0)であり、r=1,2,3,… に対してA2r=C+(ba)2r−2(0−ba(a−b)b2a2(a−b)0)である。

(3)

(2) の式を見ると、An の成分が収束するかどうかは (ba)2r および (ba)2r−2 が収束するかどうかで決まる。a2≠b2 より ∣b/a∣=1 は起こらない。 ∣b/a∣<1 なら、これらの項は0に収束し、An は奇数番目・偶数番目ともに C へ近づく。したがってすべての成分が収束する。

一方、∣b/a∣>1 なら、D1 は零行列でないため、少なくとも一部の成分は大きさが無限に大きくなり、収束しない。よって必要十分条件は ∣ba∣<1 すなわち ∣b∣<∣a∣ である。

条件・検算

初項と漸化式へ一般項を戻して検算する。収束条件では a2≠b2 により境界 ∣b/a∣=1 が最初から除かれている。

別解

解法2(和と差の漸化式による別解)

方針

各 An が反対角成分だけをもつことを成分比較で示し、その2成分を un,vn とおく。和 sn=un+vn と差 dn=un−vn に分けると、2本の1次漸化式になる。

解答

(1) C=(01a−b−1a−b0).(2)An=(0unvn0)とおく。初項はこの形であり、漸化式の成分比較から次項も同じ形になる。比較するとaun+1+bvn=1,avn+1+bun=−1.そこでsn=un+vn,dn=un−vn,r=baとおく。2式の和と差からsn+1=−rsn,dn+1=rdn+2a.初期値は s1=d1=1/a であるからsn=1a(−r)n−1,dn=1arn−1+2a 1−rn−11−r.a≠b なので分母は0でない。したがってun=sn+dn2,vn=sn−dn2により An の一般項が得られる。この表示は標準解法の奇数・偶数表示と一致する。

(3)

sn,dn がともに収束する必要十分条件は∣r∣<1.よって求める条件は∣b∣<∣a∣である。

総評

難度7、計算量7。定数解を引いて同次形にする行列漸化式の問題で、目安は25分程度である。(1)は成分比較を省くと誤りやすく、実際に C は対角行列ではなく反対角成分をもつ行列になる。(2)では Dn+1=−(b/a)SDnS と整理できれば、2回ごとに (b/a)2 倍される構造が見える。大学的な用語を使わなくても、操作を2回行う計算だけで一般項と収束条件まで到達できる。

問題・解答の積分・総和・極限は原則として独立行に置き、分数は表示サイズで可読性を確保した。図は原問題の復元図または答案の論理関係を確認するための独自作図であり、解法の境界条件と結論を本文だけでも追えるようにした。

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出典: 東北大学 2005年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。