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東京大学 1985年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第4問

abを実数とし,
A=(a0abb)とおく.

(1) 行列An (n=1,2,)の表す一次変換による点
P(12,0)Q(12,1)R(1,1)
の像をそれぞれPnQnRnとし,
fn=3PnQn2+2QnRn2+2RnPn2とおく.
(ここで,CDは線分CDの長さを表す.)
fnabを用いて表せ.

(2) a=1.1b=11.1であるとして,
fnの値を最小にするような自然数nを求めよ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安25

行列数列 漸化式の変形微分による最大最小

方針

帰納法で An を求め、3辺の差ベクトルから fn=2a2n+4b2n とし、差 fn+1fn の符号で整数 n を決める。

解答

(1)
まず An を求める。主張はAn=(an0anbnbn)である。n=1 では明らかに成り立つ。ある n で成り立つとすると(an0anbnbn)(a0abb)=(an+10an+1bn+1bn+1)であるから,数学的帰納法によりすべての自然数 n で成り立つ。

一次変換では,2点間の差ベクトルも同じ行列で移される。もとの3点についてPQ=(01),QR=(1/20),RP=(1/21)である。

したがってPnQn=AnPQ=(0bn)より PnQn2=b2n である。またQnRn=AnQR=(an/2(anbn)/2)なので QnRn2=a2n+(anbn)24 である。さらにRnPn=AnRP=(an/2(an+bn)/2)だから RnPn2=a2n+(an+bn)24 である。

よってfn=3b2n+2a2n+(anbn)24+2a2n+(an+bn)24=3b2n+a2n+(anbn)2+(an+bn)22=3b2n+a2n+a2n+b2n=2a2n+4b2nである。

(2) a=1.1,b=11.1 であるから r=1.12=1.21 とおくと fn=2rn+4rn である。

差を調べる。fn+1fn=2rn(r1)+4rn(r11)=(r1)(2rn4rn1)である。r>1 なので,符号は 2rn4rn1 の符号で決まる。すなわち fn+1fn<0r2n+1<2 である。

ここで r3=1.213=1.771561<2 なので f2f1<0 である。一方 r5=1.215>2 なので f3f2>0 である。さらに r2n+1n とともに増加するから,n2 では fn+1fn>0 である。

したがって fnn=2 まで減少し,その後増加する。よって n=2 のとき最小である。

別解

解法2

方針

新しい座標 ξ=x,η=yx を使うと、一次変換は ξa 倍、ηb 倍するだけになる。3辺の差をこの座標で追い、重み付き和で交差項が消えることから fn を得る。

解答

(1) 一次変換後の座標を (x,y) とするとx=ax,y=ax+b(yx).そこでξ=x,η=yxとおけばξ=aξ,η=bη.したがって n 回後は (ξ,eta)(anξ,bnη) である。これを3辺の差へ適用して長さを計算するとPnQn2=b2n,QnRn2=a2n+(anbn)24,RnPn2=a2n+(an+bn)24.よってfn=2a2n+4b2n.(2) a=1.1,b=1/1.1 とし r=1.21 とおけばfn=2rn+4rn.差の符号はfn+1fn<0r2n+1<2である。r3<2<r5 だから f2<f1f3>f2 となり、その後は増加する。したがって最小にする自然数はn=2である。

総評

難易度は6,計算量は5程度である。想定時間は20分から30分程度。行列の n 乗は形を推測しやすいが,答案では帰納法を一行入れると安心である。辺の長さは3点の座標を個別に出すより,差ベクトルを写す方が短い。(2) は連続量としての最小に飛びつくより,fn+1fn の符号で自然数上の減少・増加を示すと,最小の根拠が明確になる。指数が 2n で現れるため,a,b ではなく r=1.21 に置き換えると増減比較が見やすい。数値計算は必要最小限にし,r3<2<r5 を示せば十分である。

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出典: 東京大学 1985年度 第2次学力試験 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。