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東京大学 2007年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第4問

以下の問いに答えよ.

(1) 実数aに対し,2次の正方行列APQが,5つの条件A=aP+(a+1)QP2=PQ2=QPQ=OQP=Oをみたすとする.
ただしO=(0000)である.
このとき,(P+Q)A=Aが成り立つことを示せ.

(2) aは正の数として,行列A=(a01a+1)を考える.
このAに対し,(1)の5つの条件をすべてみたす行列PQを求めよ.

(3) nを2以上の整数とし,2knをみたす整数kに対してAk=(k01k+1)とおく.
行列の積AnAn1An2A2を求めよ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

行列数列 式変形、帰納的定義の利用、計算整理

方針

(1) は与式に左から P+Q を掛ける。(2)では A の可逆性から P+Q=I を得て、A=aI+Q から P,Q を一意に定める。(3)は Ak=kP+(k+1)Q と表し、直交的な冪等関係で積を二成分に分ける。

解答

(1)

与えられた式より A=aP+(a+1)Q である。左から P+Q を掛けると(P+Q)A=(P+Q){aP+(a+1)Q}=a(P2+QP)+(a+1)(PQ+Q2)=aP+(a+1)Q=Aである。よって (P+Q)A=A が成り立つ。

(2)

いまA=(a01a+1)であり,a>0 だから detA=a(a+1)>0 である。したがって A は逆行列をもつ。

(1) より (P+Q)A=A であるから,右から A1 を掛けて P+Q=I を得る。これを A=aP+(a+1)Q に代入すると A=a(P+Q)+Q=aI+Q である。よってQ=AaI=(0011)であり,P=IQ=(1010)である。

実際に P2=P,Q2=Q,PQ=QP=O が直接確認できるので,求める行列はP=(1010),Q=(0011)である。

(3)

(2) で得た P,Qa によらない。したがってAk=(k01k+1)=kP+(k+1)Qと表せる。

また P2=P,Q2=Q,PQ=QP=O であるから,積を展開したとき,P だけを選ぶ項と Q だけを選ぶ項以外はすべて O になる。よってAnAn1A2=(nP+(n+1)Q)((n1)P+nQ)(2P+3Q)=n!P+(n+1)!2Qである。

これに P,Q を代入するとAnAn1A2=n!(1010)+(n+1)!2(0011)=(n!0(n1)n!2(n+1)!2)である。

P,Q は互いを消す補完成分で、積では同じ成分だけが残る。

別解

解法2((3)を成分漸化式で計算)

方針

(1) (2)は解法1と同様に可逆性から P,Q を決める。(3)では射影分解を使わず、下三角行列の積の対角成分と左下成分を漸化式で追う。

解答

(1) 解法1と同様に、与式へ左から P+Q を掛けて(P+Q)A=Aを得る。

(2) A は可逆なので P+Q=I である。したがってQ=AaI=(0011),P=IQ=(1010).(3) Bk=AkAk1A2 とおく。下三角行列の積なのでBk=(k!0yk(k+1)!2)と書ける。実際、対角成分は各対角成分の積である。

Bk=AkBk1 の左下成分を比較するとyk=(k1)!+(k+1)yk1,y2=1.ここでyk1=(k2)(k1)!2と仮定すればyk=(k1)!+(k+1)(k2)(k1)!2=(k1)k!2.k=2 でも成り立つので、帰納法によりyk=(k1)k!2.ゆえにAnAn1A2=(n!0(n1)n!2(n+1)!2)である。

総評

難度6,計算量5。抽象的な条件に見えるが,P,Q が互いに混ざらない成分であることを利用する問題である。(2)では A が可逆であることを確認してから P+Q=I を導くのが重要で,ここを省くと論理が弱くなる。(3)は通常の行列積で押し切るより,P 成分と Q 成分に分けると一気に短くなる。別解の成分漸化式は検算に有効で,20分程度でまとめたい。

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出典: 東京大学 2007年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。