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東京大学 2009年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第2問

実数を成分にもつ行列A=(abcd)と実数rsが下の条件(i),(ii),(iii)をみたすとする。

(i) s>1

(ii) A(r1)=s(r1)

(iii) An(10)=(xnyn)
(n=1,2,)とするとき,limnxn=limnyn=0

このとき以下の問に答えよ。

(1) B=(1r01)1A(1r01)
acrsを用いて表せ。

(2) Bn(10)=(znwn)
(n=1,2,)とするとき,limnzn=limnwn=0を示せ。

(3) c=0かつa<1を示せ。

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

行列数列論証・証明 式変形、漸化式の変形極限計算、誘導利用

方針

(1) は条件(ii)からbda,c,r,sで表し,P=(1r01)としてP1APを直接計算する。(2)はB=P1APよりBn=P1AnPであり,しかもP(1,0)T=(1,0)Tであることを使う。(3)は(1)で得た下三角形の形からBn(1,0)Tの成分の漸化式を書く。s>1なので,もしc0なら下成分にsn1程度の成長が残り,(2)の極限0に反する。

解答

(1)

条件(ii)よりA(r1)=(ar+bcr+d)=s(r1)=(srs)である。したがって ar+b=sr,cr+d=s より b=r(sa),d=scr である。P=(1r01)とおくとP1=(1r01)である。まずAP=(abcd)(1r01)=(aar+bccr+d)=(asrcs)である。よってB=P1AP=(1r01)(asrcs)=(acr0cs)である。

(2)

B=P1APであるから,繰り返し掛けると Bn=P1AnP である。またP(10)=(10)である。したがってBn(10)=P1AnP(10)=P1An(10)となる。

条件(iii)よりAn(10)=(xnyn)であるから(znwn)=P1(xnyn)=(1r01)(xnyn)=(xnrynyn)である。xn0yn0なので zn=xnryn0,wn=yn0 である。

(3)

(1) の結果を用い,λ=acr とおく。このときB=(λ0cs)である。Bn(1,0)T=(zn,wn)Tとし,便宜上z0=1,w0=0とおくと,(zn+1wn+1)=B(znwn)=(λznczn+swn)である。したがって zn+1=λzn,wn+1=czn+swn となる。特に zn=λn である。

(2) よりzn0であるから λ<1 である。

ここでc0と仮定して矛盾を導く。上の漸化式からwn=c(λn1+sλn2+s2λn3++sn2λ+sn1)である。両辺をsn1で割るとwnsn1=c{1+λs+(λs)2++(λs)n1}である。s>1かつλ<1より λs<1 なので,右辺は c1λ/s に近づく。この値はc0なら0ではない。したがってwnsn1に比例する大きさをもち,0に近づくことはできない。これは(2)のwn0に反する。

よってc=0である。このとき λ=acr=a であり,すでにλ<1が分かっているので c=0,a<1 である。

総評

難度6、計算量5。目安時間は20分程度で,誘導通りに行列を変形し,最後は2成分の数列として処理する問題である。(1)では条件(ii)からb,dを消してから掛け算すると計算が軽い。(2)はP(1,0)T=(1,0)Tを見落とさないことが重要で,これにより条件(iii)の極限をそのまま移せる。(3)ではs>1の成分が残ると下成分が0に収束できない,という一点を漸化式で示す。抽象的な行列用語に逃げず,成分計算で最後まで書くのが安全である。

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出典: 東京大学 2009年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。