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東京大学 2012年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第5問

行列A=(abcd)が次の条件(D)を満たすとする。

(D) Aの成分abcdは整数である。
また,平面上の4点(0,0)(a,b)(a+c,b+d)(c,d)は,
面積1の平行四辺形の4つの頂点をなす。

B=(1101)とおく。
次の問いに答えよ。

(1) 行列BAB1Aも条件(D)を満たすことを示せ。

(2) c=0ならば,ABB1のどちらかを左から次々にかけることにより,
4個の行列(1001)
(1001)
(1001)
(1001)のどれかにできることを示せ。

(3) ac>0とする。
BAB1Aの少なくともどちらか一方は,
それを(xyzw)とするとx+z<a+cを満たすことを示せ。

難易度6/ 10計算量5/ 10目安16

行列整数論証・証明 式変形、場合分け、範囲評価、誘導利用

方針

条件(D)は、2つの辺ベクトル (a,b)(c,d) が作る平行四辺形の面積が1であることなので、成分が整数かつ adbc=1 と言い換えられる。(1)は左から BB1 をかけた行列を直接計算し、整数性と行列式の絶対値が保たれることを示す。(2)は c=0 から a,d=±1 を得て、Bk を左からかける操作が右上成分を b+kd に変えることを使う。(3)は第1列だけを見て、a,c の符号に応じて a+c または ac の絶対値を小さくする。

解答

(1)
4点 (0,0),(a,b),(a+c,b+d),(c,d) が作る平行四辺形の2つの辺ベクトルは (a,b),(c,d) である。したがってその面積は adbc である。よって条件(D)は、成分が整数であり、かつ adbc=1 であることと同値である。 B1B1=(1101)である。直接計算するとBA=(1101)(abcd)=(a+cb+dcd)であり、B1A=(1101)(abcd)=(acbdcd)である。どちらも成分は整数である。

また (a+c)d(b+d)c=adbc であり、(ac)d(bd)c=adbc である。したがってどちらの行列でも adbc に対応する値は1のまま保たれる。よって BAB1A も条件(D)を満たす。

(2) c=0 とする。このとき条件(D)より adbc=ad=1 である。a,d は整数なので a=±1,d=±1 である。

整数 k に対してBk=(1k01)である。k>0 なら Bk 回、k<0 なら B1k 回左からかけることで BkA が得られる。いまBkA=(1k01)(ab0d)=(ab+kd0d)である。 d=±1 なので k=bd と選べば k は整数であり、b+kd=bbd2=0 となる。したがってBkA=(a00d)にできる。ここで a,d はそれぞれ ±1 だから、得られる行列は(1001),(1001),(1001),(1001)のいずれかである。

(3) BA=(a+cb+dcd),B1A=(acbdcd)である。問題の不等式は第1列だけに関係するので、a+c+cac+c を比べればよい。

まず ac が同符号のときを考える。このとき ac>0 より ac=ac である。したがって B1A について x+z=ac+c=a<a+c となる。

次に ac が異符号のときを考える。このとき a+c=ac である。したがって BA について x+z=a+c+c=a<a+c となる。

以上より、BAB1A の少なくともどちらか一方は x+z<a+c を満たす。

総評

難度6、目安時間16分。旧課程の行列問題だが、実質は整数成分の行基本操作と面積保存である。条件(D)を adbc=1 に翻訳するところが入口で、以後は左から BB1 をかけると第1行が第1行±第2行に変わることを追えばよい。(2)では Bk が反復操作で実現できること、(3)では第1列の絶対値和だけを下げればよいことを明確に書くと、誘導の意図が伝わる。

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出典: 東京大学 2012年度 第2次学力試験 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。