方針
(1) は両辺が正なので対数を取り、x>0 と x<0 を分ける。対数を含む補助関数の導関数を積分表示で評価する。(2)は(1)へ x=1/100 と x=−1/100 を代入する。積 0.99⋅1.01=0.9999 が現れ、左右の不等式がそのまま得られる。
解答
(1)
両辺は正なので対数を取って比較できる。
まず 0<x<1 とする。示すべき不等式はlog(1+x)+(1−x)log(1−x)>0と同値である。そこでF(x)=log(1+x)+(1−x)log(1−x)とおく。F(0)=0 であり、F′(x)=1+x1−log(1−x)−1=−1+xx−log(1−x).0<x<1 では−log(1−x)=∫0x1−u1du>x>1+xxだから F′(x)>0 である。よって F(x)>F(0)=0 となる。
次に −1<x<0 とし、y=−x とおく。
このとき 0<y<1 であり、示すべき不等式はlog(1−y)+(1+y)log(1+y)<0と同値である。そこでG(y)=log(1−y)+(1+y)log(1+y)とおく。G(0)=0 であり、G′(y)=−1−y1+log(1+y)+1=log(1+y)−1−yy.0<y<1 ではlog(1+y)=∫0y1+u1du<y<1−yyだから G′(y)<0 である。よって G(y)<G(0)=0 となる。
以上から、−1<x<1、x=0 で(1−x)1−x1<(1+x)x1が成り立つ。
(2)
(1)へ x=1/100 を代入すると(10099)−99<(100101)100.両辺へ (99/100)100 を掛けて10099<(10099⋅100101)100=0.9999100.したがって0.99<0.9999100.次に (1)へ x=−1/100 を代入すると(100101)101<(10099)−100.両辺へ (99/100)101 を掛けて(10099⋅100101)101<10099.したがって0.9999101<0.99.以上より0.9999101<0.99<0.9999100.
別解
解法2(単一の補助関数と二項評価)
方針
(1) は対数差を F(x)/x とまとめ、F′′ の符号からF が全区間で狭義増加することを示す。(2)は(1)に頼らず、右側をベルヌーイ型評価、左側を二項展開の交代項で挟む。
解答
(1)
対数を取った右辺と左辺の差はx1log(1+x)−(1−x1)log(1−x)=xlog(1+x)+(1−x)log(1−x).そこでF(x)=log(1+x)+(1−x)log(1−x)とおく。F(0)=0 であり、F′(x)=−1+xx−log(1−x),F′′(x)=−(1+x)21+1−x1=(1−x)(1+x)2x(x+3).したがって F′′(x)<0 (−1<x<0)、
F′′(x)>0 (0<x<1) であり、F′(0)=0 だからF′(x)>0(−1<x<1, x=0).よって F は狭義増加し、x<0⇒F(x)<0,x>0⇒F(x)>0.いずれの場合も F(x)/x>0 である。したがって対数を取った右辺が
左辺より大きく、(1−x)1−x1<(1+x)x1が示された。
(2)
y=10−4 とおく。まずH(y)=(1−y)100−(1−100y)とおけば H(0)=0 で、H′(y)=100{1−(1−y)99}>0(0<y<1).したがって0.9999100=(1−y)100>1−100y=0.99.一方、二項展開により(1−y)101=1−101y+101C2y2−101C3y3+⋯−y101.第 j 項と第 j+1 項の絶対値の比は101Cjyj101Cj+1yj+1=j+1101−jy≦50⋅10−4<1(j≧1).したがって第3次項以降は、負から始まり絶対値が減少する交代和である。
よって(1−y)101<1−101y+101C2y2=1−10000101+1085050=0.9899505<0.99.以上より0.9999101<0.99<0.9999100.
総評
難度は10段階中6、計算量は10段階中5。目安時間は20分程度で、(1)では正の両辺へ対数を取り、x の符号を安全に処理する。符号別の補助関数でも、対数差を F(x)/x とまとめる方法でも証明できる。(2)の出題意図は (1) に x=±1/100 を代入し、0.99⋅1.01=0.9999 を作ることである。この誘導解法を主解とし、近似に頼らない独立確認としてベルヌーイ型評価と二項展開も収録した。小数の丸めだけで大小を主張してはならない。
冊子PDFで見る東大の指数・対数の問題で問題集を作る
出典: 東京大学 2009年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。