方針
右辺を En(s)=∑r=0nsr/r! とおき、帰納法で (1+an+1)En(sn)≦En+1(sn+an+1) を示す。差を直接評価し、(s+a)r−sr≧rasr−1 と、最後の項 (s+a)n+1/(n+1)! が不足分を補うことを使う。
解答
En(u)=r=0∑nr!ur とおく。示すべき不等式は (1+a1)(1+a2)⋯(1+an)≦En(sn) である。 n=1 のときは s1=a1 であり、1+a1=1+s1=E1(s1) だから成り立つ。 n で成り立つと仮定する。a=an+1, s=sn とおくと、sn+1=s+a である。帰納法の仮定より(1+a1)(1+a2)⋯(1+an+1)={(1+a1)(1+a2)⋯(1+an)}(1+a)≦(1+a)En(s)である。したがって (1+a)En(s)≦En+1(s+a) を示せばよい。 s,a≧0 であるから、1≦r≦n について (s+a)r−sr≧rasr−1 である。また二項展開の asn の項を見れば (s+a)n+1≧(n+1)asn である。よって (n+1)!(s+a)n+1≧n!asn である。
以上を用いるとEn+1(s+a)−En(s)=r=1∑nr!(s+a)r−sr+(n+1)!(s+a)n+1≧r=1∑nr!rasr−1+n!asn=ar=0∑nr!sr=aEn(s)である。したがって En+1(s+a)≧(1+a)En(s) が成り立つ。
これにより (1+a1)(1+a2)⋯(1+an+1)≦En+1(sn+1) が示された。数学的帰納法により、すべての正の整数 n について不等式が成り立つ。
帰納法の1段を、補助多項式 F(a) の単調性で閉じる
別解
解法2
方針
帰納法の仮定から必要になる (1+a)En(s)≦En+1(s+a) を、a の関数として調べる。差を F(a) とおくと、導関数は有限指数和の単調性だけで非負になる。F(0)≧0 と合わせて帰納法を閉じる。
解答
次の有限和を用いる。En(u)=r=0∑nr!ur.n=1 では1+a1=E1(a1)=E1(s1)だから主張は成り立つ。
n のときに(1+a1)(1+a2)⋯(1+an)≦En(sn)が成り立つと仮定する。s=sn、a=an+1 とおけば(1+a1)(1+a2)⋯(1+an+1)≦(1+a)En(s)である。
そこで a≧0 に対してF(a)=En+1(s+a)−(1+a)En(s)とおく。有限和を微分すると En+1′(u)=En(u) だからF′(a)=En(s+a)−En(s).En(u) は u≧0 で増加するので F′(a)≧0 である。またF(0)=En+1(s)−En(s)=(n+1)!sn+1≧0.したがって a≧0 で F(a)≧0、すなわち(1+a)En(s)≦En+1(s+a)が成り立つ。よって(1+a1)(1+a2)⋯(1+an+1)≦En+1(sn+1)である。数学的帰納法により、全ての正の整数 n について所望の不等式が示された。
総評
指数型の有限和で積を上から押さえる帰納法問題。目安時間は24分。帰納法の段階では、単に「展開すればよい」ではなく、(s+a)r−sr が a を1つ含む項で下から評価できることを明示する必要がある。最後の (n+1) 次の項が asn/n! を補うため、切り捨て和でも帰納法が閉じる。 2つの解法と解説図を相互に照合し、境界値・必要十分性・符号も確認した。
冊子PDFで見る東北大の数列の問題で問題集を作る
出典: 東北大学 1984年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。