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東北大学 1990年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第2問

行列A=(abcd)abcdは実数)について,
次の問に答えよ.

(1) AkEkは実数)で,実数xyが等式A2xA+yE=Oを満たすとき,xyabcdで表せ.
ここでEは単位行列,Oは零行列を表すものとする.

(2) AAOA3+A=Oを満たせば,
Aは逆行列をもち,A1=Aとなることを示せ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

行列論証・証明 恒等式比較、計算整理、必要十分条件

方針

(1) は2次行列が自分の2次式を満たす恒等式を成分比較で作る。ただし A=kE でない条件により、AE の係数比較ができることを明記する。(2)はまず A=kE の場合を除き、(1)の関係式と A3+A=O を組み合わせて A2+E=O を導く。最後に A が逆行列であることを積で示す。

解答

(1) A=(abcd)とする。直接計算するとA2=(a2+bcb(a+d)c(a+d)bc+d2)である。ここで A2(a+d)A+(adbc)E の各成分を見ると、左上は a2+bca(a+d)+adbc=0 であり、右上、左下もそれぞれ 0、右下も bc+d2d(a+d)+adbc=0 となる。したがって A2(a+d)A+(adbc)E=O である。

いま A2xA+yE=O も成り立つので、2式を引くと {x(a+d)}A{y(adbc)}E=O となる。もし x(a+d)0 なら A は単位行列の実数倍になってしまい、仮定に反する。よって x=a+d であり、続いて y=adbc である。

(2)
まず A=kE と仮定すると、A3+A=O から (k3+k)E=O となる。実数 k について k3+k=k(k2+1)=0 だから k=0 であり、これは A=O となって仮定に反する。したがって A は単位行列の実数倍ではなく、(1)を用いることができる。

(1) より A2xA+yE=O ただし x=a+dy=adbc である。この式に右から A を掛けると A3xA2+yA=O である。A3=A を代入して xA2+(1y)A=O を得る。さらに A2=xAyE を用いると x(xAyE)+(1y)A=O すなわち (x2+1y)AxyE=O である。A は単位行列の実数倍でないから x2+1y=0,xy=0 が必要である。ここで x=0 なら y=1、また y=0 なら x2+1=0 となり実数では不可能である。よって x=0,y=1 である。したがって A2+E=O すなわち A2=E である。よって A(A)=(A)A=E となるから、A は逆行列をもち A1=A である。

別解

解法2:行列式が0の場合を先に排除する

方針

(1) は2次正方行列の各成分を直接比較する。(2) はまず行列式が0だと仮定し、(1)の恒等式から A=O が導かれることを示す。これで逆行列の存在を確定してから、与式を因数分解する。

解答

(1)
直接計算によりA2(a+d)A+(adbc)E=Oが成り立つ。これとA2xA+yE=Oとの差を取ると{x(a+d)}A{y(adbc)}E=O.AkE だから A,E は実数係数について比例せず、x=a+d,y=adbc.(2)
A3+A=O を満たす AO を考える。もしdetA=adbc=0なら、(1)の恒等式からA2=(a+d)A.よって A3=(a+d)2A であり、与式は{(a+d)2+1}A=Oとなる。係数は正なので A=O となり矛盾する。したがって detA0 で、A は逆行列をもつ。

ここでA(A2+E)=Oの左から A1 を掛けるとA2+E=O.ゆえにA(A)=(A)A=Eであり、A1=A.

総評

難度は10段階中6、計算量は10段階中5。2次行列の標準恒等式を知っていても、係数比較に AkE が必要である点を書かないと論証が弱くなる。(2)は A(A2+E)=O からすぐ逆行列を主張できないため、(1)を経由して A2+E=O そのものを導くのが安全である。試験場では15分程度で、例外 A=kE の排除を先に処理したい。

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出典: 東北大学 1990年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。