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東北大学 1990年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第3問

実数ab ((a,b)(0,0))に対して,
T=(abba)で定められる行列を考える.

(1) vを平面上の0でないベクトルとするとき,
ベクトルの大きさの比Tvv
abを使って表せ.

(2) 行列の集合{Tnn=0,1,2,}が有限集合となるとき,
Tは回転の行列であることを示せ.
ただし,T0は単位行列Eを表すものとする.

(3) {Tnn=0,1,2,}が2個の要素からなるように
abを定めよ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安20

行列ベクトル三角関数 ベクトル成分計算回転・拡大必要十分条件

方針

この行列は、どのベクトルも同じ倍率 a2+b2 で長さを変え、同じ角だけ向きを変える形である。(1)で倍率を求め、(2)では有限個のべきの中に同じものが現れることから、ある正の整数乗が単位行列になると見る。すると倍率のべきが1になるので倍率は1であり、回転行列になる。(3)は回転を2回で単位行列に戻す条件を調べる。

解答

(1) v=(x,y) とおく。ただし (x,y)(0,0) である。このとき Tv=(axby,bx+ay) であるから Tv2=(axby)2+(bx+ay)2 となる。右辺を展開すると a2x22abxy+b2y2+b2x2+2abxy+a2y2=(a2+b2)(x2+y2) である。したがって Tvv=a2+b2 である。

(2) (a,b)(0,0) なので detT=a2+b2>0 であり、T は逆行列をもつ。集合 {Tnn=0,1,2,} が有限なら、ある整数 m>n について Tm=Tn である。両辺に Tn の逆行列を掛けると Tmn=E となる。

(1) より、T を1回作用させるとベクトルの長さは r=a2+b2 倍になる。したがって Tmn=E では長さの倍率が rmn=1 でなければならない。r>0 だから r=1 である。よって a2+b2=1 となるので、ある実数 θ を用いて a=cosθ,b=sinθ と書ける。したがってT=(cosθsinθsinθcosθ)であり、これは原点のまわりの回転を表す行列である。

(3)
要素が2個であるためには、TE かつ T2=E でなければならない。(2)より T は回転行列であるから、回転角を θ とすると、T2=E2θ が1回転の整数倍であることを意味する。さらに TE だから、回転角は半回転である。すなわち cosθ=1,sinθ=0 である。よって a=1,b=0 である。

別解

解法2:複素数の掛け算として調べる

方針

ベクトル (x,y) を複素数 z=x+yi とみなすと、Ta+bi を掛ける操作である。絶対値と偏角の性質から倍率と回転を読み、有限性を複素数の累乗で判定する。

解答

(1)
(x,y) を複素数 z=x+yi とみなす。T の作用は(a+bi)(x+yi)=(axby)+(bx+ay)iに一致する。したがって絶対値の積の性質からTvv=a+bi=a2+b2.(2)
w=a+bi0 とおく。集合{1,w,w2,}が有限なら、ある m>n について wm=wn である。wn0 なのでwmn=1.絶対値を取るとwmn=1であり、w=1 となる。よってa=cosθ,b=sinθと書け、T は原点中心の回転を表す。

(3)
集合の要素が2個ならTE,T2=E.複素数では w1, w2=1 だから w=1 に限る。したがってa=1,b=0.

総評

難度は10段階中6、計算量は10段階中5。計算自体は短いが、有限集合という条件を「同じべきが2回現れる」と言い換えるところが要点である。(2)で T が逆行列をもつこと、(3)で TE を忘れないことが失点防止になる。試験場では15分前後で、倍率と回転角を分けて整理すると見通しがよい。

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出典: 東北大学 1990年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。