方針
5桁をまとめて扱うのではなく,1つの桁が1である確率を追う。1から0へ誤る確率が q,0から1へ誤る確率が p なので,その桁が1である確率は1次の漸化式を満たす。この漸化式の極限を求めると,十分多く写した後に1である確率は p+qp,0である確率は q/(p+q) になる。元の列 10110 には1が3個,0が2個あるので,各桁の独立性を使って確率を掛け合わせる。
解答
1つの桁に注目し,第 n 回の写しでその桁が1である確率を rn とする。次に書き写すとき,前の桁が0なら確率 p で1になり,前の桁が1なら確率 1−q で1のままである。したがって rn+1=p(1−rn)+(1−q)rn である。整理すると rn+1=p+(1−p−q)rn となる。
この漸化式の極限を r とすれば r=p+(1−p−q)r であるから r=p+qp である。実際,rn+1−p+qp=(1−p−q)(rn−p+qp) であり,0<p<1,0<q<1 より −1<1−p−q<1 だから,rn は初期値が0でも1でも p+qp に近づく。
したがって十分多く写した後,1つの桁が1である確率は p+qp に近づき,0である確率は 1−p+qp=p+qq に近づく。
元の列 S=10110 には1が3個,0が2個ある。各桁の写し間違いは互いに独立に起こり,桁ごとの変化規則も同じである。よって Sn が S と一致する確率の極限は,元が1である3桁が1になる極限確率と,元が0である2桁が0になる極限確率の積である。すなわちn→∞limC(n)=(p+qp)3(p+qq)2=(p+q)5p3q2である。
別解
解法2
方針
元の桁が1の場合と0の場合を分け、各桁が元の値に一致する確率を
明示式まで求める。5桁全体の確率 C(n) を有限段階で積の形に
書いてから極限を取れば、初期値の違いも独立性も見通しよく確認できる。
解答
1桁について、第 n 回の写しが1である確率を rn とする。
写す前を第0回と数えるとrn+1=p(1−rn)+(1−q)rn=p+(1−p−q)rn.λ=1−p−q,r=p+qpと置けばrn+1−r=λ(rn−r),∣λ∣<1.元の桁が1なら r0=1 なので、第 n 回にも1である確率はαn=p+qp+p+qqλn.元の桁が0なら r0=0 であり、第 n 回にも0である確率はβn=1−{p+qp−p+qpλn}=p+qq+p+qpλn.元の列 10110 は1を3個、0を2個含む。各桁の誤写は独立であるからC(n)=αn3βn2.∣λ∣<1 より λn→0 なのでn→∞limC(n)=(p+qp)3(p+qq)2=(p+q)5p3q2.
総評
難度6、計算量4、目安14〜17分。5桁全体を32状態で追う必要はなく、1桁の2状態遷移で十分である。解法1は固定値への収束、解法2は初期値0・1それぞれの明示式を求めた。各桁の独立性と元の列に1が3個、0が2個あることを明記して、極限 p3q2/(p+q)5 を再確認した。
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出典: 東京大学 1993年度 前期日程 第2次学力試験 理系 第5問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。