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東京大学 1996年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第3問

空間内の点Oを中心とする一辺の長さがlの立方体の頂点をA1,A2,,A8とする。また,Oを中心とする半径rの球面をSとする。

(1) S上のすべての点からA1,A2,,A8のうち少なくとも1点が見えるための必要十分条件をlrで表せ。

(2) S上のすべての点からA1,A2,,A8のうち少なくとも2点が見えるための必要十分条件をlrで表せ。

ただし,S上の点PからAkが見えるとは,AkSの外側にあり,線分PAkSとの共有点がPのみであることとする。

難易度8/ 10計算量6/ 10目安25

ベクトル図形と方程式 ベクトル成分計算内積の利用、範囲評価、必要十分条件

方針

まず,球面上の点 P から外部の点 A が見える条件を,線分 PA が球の内側へ入らない条件として内積で表す。立方体の頂点を l2(±1,±1,±1),球面上の点を P=r(u,v,w)u2+v2+w2=1 とおくと,可視条件は符号和 ±u±v±w の大小比較になる。(1)では最大の符号和 u+v+w の最小値を調べる。(2)では対称性により uvw0 として,2番目に大きい符号和 u+vw の最小値を調べる。

解答

(1)

球面 S 上の点 P と,立方体の頂点の一つ A を考える。線分 PA 上の点は P+λ(AP)(0λ1) と表せる。P=r であるから,P+λ(AP)2r2=P2+2λP(AP)+λ2AP2r2=λ{2(PAr2)+λAP2}である。 0<λ1 に対してこの値が負にならなければ,線分 PA は球の内側に入らず,共有点は P だけである。λ を十分小さくしたときの符号も考えると,これは PAr2 と同値である。

立方体の頂点は l2(±1,±1,±1) と書ける。球面上の点を P=r(u,v,w),u2+v2+w2=1 とおくと,ある頂点が見える条件は lr2(±u±v±w)r2 すなわち ±u±v±w2rl である。

固定した (u,v,w) に対して,八つの符号和の最大値は u+v+w である。したがって,すべての P から少なくとも1点が見えるための必要十分条件は u+v+w2rl がすべての u2+v2+w2=1 で成り立つことである。

ここで u+v+wu2+v2+w2=1 であり,等号は (u,v,w)=(1,0,0) などで成り立つ。よって左辺の最小値は 1 である。したがって必要十分条件は 2rl1 すなわち rl2 である。この条件の下では頂点の距離 3l/2r より大きいので,頂点は球面の外側にある。

(2)

今度は,すべての P から少なくとも2点が見える条件を考える。座標軸の入れ替えと符号の反転に関する対称性により,uvw0 としてよい。このとき八つの符号和のうち最も大きいものは u+v+w であり,2番目に大きいものは u+vw である。実際,ほかの候補 uv+wu+v+w は,vwuw により u+vw 以下である。

したがって,少なくとも2点が見えるためには,すべての uvw0,u2+v2+w2=1 に対して u+vw2rl が成り立つことが必要十分である。

この左辺の最小値を求める。vw0 だから u+vwu である。また uvw0 より 1=u2+v2+w23u2 なので u13 である。したがって u+vw13 である。等号は u=v=w=13 のとき成り立つから,最小値は 1/3 である。

よって必要十分条件は 2rl13 すなわち rl23 である。この条件でも各頂点は球面の外側にある。

別解

解法2

方針

Pにおける球の接平面を考える。頂点が見えることは,その頂点が接平面の外側の半空間にあることと同値である。立方体の8頂点を符号ベクトルで表し,接平面の外側にある頂点の個数を符号和の大きい順に調べる。

解答

球面上の点をP=ru,u=(u,v,w),u2+v2+w2=1とする。Pにおける球の接平面はux=rであり,球はuxrの側にある。したがって,外部の点APから見えるための必要十分条件はuArである。

立方体の頂点はA=l2(±1,±1,±1)と表せるので,可視条件は±u±v±w2rl.(1)(1)

8個の符号和の最大値はu+v+wである。この値はu+v+wu2+v2+w2=1を満たし,(u,v,w)=(1,0,0)などで1になる。よってすべてのPで(1)を満たす頂点が少なくとも1個あるための必要十分条件は2rl1,すなわちrl2.(2)

立方体の対称性によりuvw0としてよい。このとき最大の符号和はu+v+w,2番目はu+vwである。さらにu+vwu,1=u2+v2+w23u2だからu+vw13.等号はu=v=w=13のとき成り立つ。したがって,すべてのPから少なくとも2頂点が見えるための必要十分条件は2rl13,すなわちrl23.

総評

見える条件を内積の不等式に直し,その後は八つの符号和の順序を調べる問題である。難易度は8,計算量は6程度で,想定時間は25分前後。(1)は最大の符号和の最小値,(2)は2番目に大きい符号和の最小値を求める点が違う。(2)で最大値だけを見てしまうと「少なくとも2点」の条件にならない。対称性で uvw0 にしてから,なぜ2番目が u+vw なのかを一言説明すると,答案の説得力が大きく上がる。 2解法の結論を相互照合し,定義域,端点,場合分け,図示範囲を確認した。

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出典: 東京大学 1996年度 前期日程 第2次学力試験 理系 前期 第3問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。