方針
(1) は第1象限の全ての点で 、 となることから、各係数が負ではありえないことを示す。片方の変数を固定し、もう片方を十分大きくするのが確実である。(2)では と の両方に(1)を適用する。逆行列の成分がすべて0以上になる条件を の正負で分けると、正の対角成分だけが残る場合と、正の反対側の成分だけが残る場合に絞られる。
解答
(1)
変換後の点は である。第1象限の任意の点 に対してこの点も第1象限にあるから、常に である。
もし なら、 と固定して を十分大きくすると となり矛盾する。したがって である。もし なら、 と固定して を十分大きくすると となり矛盾する。よって である。
同じ議論を第2成分に用いると、 なら で を十分大きくすれば矛盾し、 なら で を十分大きくすれば矛盾する。したがって である。
(2) が第1象限を第1象限へうつすので、(1)より である。 とおくと、 であり、逆変換はで表される。 も第1象限を第1象限へうつすので、この逆行列の成分もすべて0以上である。
まず の場合を考える。このとき より である。すでに だから である。さらに なので、 と合わせて である。
次に の場合を考える。このとき より である。すでに だから である。すると なので、 と合わせて である。
よって必要条件は または である。
十分性も確認する。前者では であり、逆変換も正の定数で割るだけなので、第1象限は第1象限へうつる。後者では であり、正の定数倍をしながら2つの座標を入れ替えるだけなので、逆変換も同じく第1象限を第1象限へうつす。したがって求める条件は上の2通りである。
第1象限を両方向に保つと、2本の境界半直線は境界半直線へ移る
別解
解法2
方針
(1) 第1象限の点をすべて第1象限へ送る条件から、各列ベクトルの成分が非負であることを示す。(2) と がともに第1象限を保つなら、 は閉じた第1象限をそれ自身へ一対一に対応させる。境界をなす2本の半直線は、別々の境界半直線へ移る。この幾何学的事実から、行列の2列の配置を決める。
解答
(1) 第1列を 、第2列を とする。 に対してが第1象限に入る。もし なら を固定して を十分大きくすると第1成分が負になる。よって である。同様に が得られる。
(2) と はともに第1象限を第1象限へ移すから、連続性を用いてその閉包も互いに移し合う。したがって である。
の境界は正の 軸と正の 軸からなる。内部の点が境界へ移ると、逆変換で境界点が内部へ戻ることになり矛盾するので、 は境界を境界へ移す。特には境界上にある。また だからこの2ベクトルは同一直線上にはなく、異なる2本の境界半直線上にある。
したがって配置は次の2通りだけである。すなわちまたはである。どちらの場合も正の定数倍と座標の交換だけなので、 と は確かに第1象限を第1象限へ移す。よってこれらは必要十分条件である。
総評
難易度は5、計算量は4程度である。想定時間は18分から25分程度。「任意の第1象限の点」という条件を、係数の非負性に変換できるかが中心である。特定の点を代入するだけでは弱く、片方の変数を十分大きくする議論が必要になる。(2)では逆行列の成分に(1)を適用し、 の正負を分けると機械的に条件が出る。最後に十分性を確認しないと、必要条件だけの答案になるので注意したい。 2つの解法と解説図を相互に照合し、境界値・定義域・必要十分性・符号も確認した。