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北海道大学 1984年度 前期日程 第2次学力試験文系数学 第2問

fを行列(abcd)で表される1次変換とする.

(1) 変換fが第1象限,すなわち集合{(x,y)x>0,y>0},の任意の点を
第1象限の点にうつすならば,
a0b0c0d0であることを示せ.

(2) adbc0であり,かつ変換fとその逆変換f1がともに第1象限の任意の点を第1象限の点にうつすための
abcdに関する条件を求めよ.

難易度5/ 10計算量4/ 10目安20

行列論証・証明 必要十分条件、場合分け、式変形

方針

(1) は第1象限の全ての点で ax+by>0cx+dy>0 となることから、各係数が負ではありえないことを示す。片方の変数を固定し、もう片方を十分大きくするのが確実である。(2)では ff1 の両方に(1)を適用する。逆行列の成分がすべて0以上になる条件を adbc の正負で分けると、正の対角成分だけが残る場合と、正の反対側の成分だけが残る場合に絞られる。

解答

(1)
変換後の点は (ax+by,cx+dy) である。第1象限の任意の点 (x,y) に対してこの点も第1象限にあるから、常に ax+by>0,cx+dy>0 である。

もし a<0 なら、y=1 と固定して x を十分大きくすると ax+b<0 となり矛盾する。したがって a0 である。もし b<0 なら、x=1 と固定して y を十分大きくすると a+by<0 となり矛盾する。よって b0 である。

同じ議論を第2成分に用いると、c<0 なら y=1x を十分大きくすれば矛盾し、d<0 なら x=1y を十分大きくすれば矛盾する。したがって a0,b0,c0,d0 である。

(2) f が第1象限を第1象限へうつすので、(1)より a,b,c,d0 である。Δ=adbc とおくと、Δ0 であり、逆変換はf1:1Δ(dbca)で表される。f1 も第1象限を第1象限へうつすので、この逆行列の成分もすべて0以上である。

まず Δ>0 の場合を考える。このとき bΔ0,cΔ0 より b0,c0 である。すでに b,c0 だから b=c=0 である。さらに Δ=ad0 なので、a,d0 と合わせて a>0,d>0 である。

次に Δ<0 の場合を考える。このとき dΔ0,aΔ0 より d0,a0 である。すでに a,d0 だから a=d=0 である。すると Δ=bc0 なので、b,c0 と合わせて b>0,c>0 である。

よって必要条件は b=c=0, a>0, d>0 または a=d=0, b>0, c>0 である。

十分性も確認する。前者では (x,y)(ax,dy) であり、逆変換も正の定数で割るだけなので、第1象限は第1象限へうつる。後者では (x,y)(by,cx) であり、正の定数倍をしながら2つの座標を入れ替えるだけなので、逆変換も同じく第1象限を第1象限へうつす。したがって求める条件は上の2通りである。

第1象限を両方向に保つと、2本の境界半直線は境界半直線へ移る

別解

解法2

方針

(1) 第1象限の点をすべて第1象限へ送る条件から、各列ベクトルの成分が非負であることを示す。(2) ff1 がともに第1象限を保つなら、f は閉じた第1象限をそれ自身へ一対一に対応させる。境界をなす2本の半直線は、別々の境界半直線へ移る。この幾何学的事実から、行列の2列の配置を決める。

解答

(1) 第1列を u=(a,c)、第2列を v=(b,d) とする。x>0,y>0 に対してf(x,y)=xu+yvが第1象限に入る。もし a<0 なら y を固定して x を十分大きくすると第1成分が負になる。よって a0 である。同様に b,c,d0 が得られる。

(2) ff1 はともに第1象限を第1象限へ移すから、連続性を用いてその閉包K={(x,y)x0,y0}も互いに移し合う。したがって f(K)=K である。

K の境界は正の x 軸と正の y 軸からなる。内部の点が境界へ移ると、逆変換で境界点が内部へ戻ることになり矛盾するので、f は境界を境界へ移す。特にf(1,0)=(a,c),f(0,1)=(b,d)は境界上にある。また adbc0 だからこの2ベクトルは同一直線上にはなく、異なる2本の境界半直線上にある。

したがって配置は次の2通りだけである。(a,c)(b,d)対角型(a,0), a>0(0,d), d>0交換型(0,c), c>0(b,0), b>0すなわちb=c=0,a>0,d>0,またはa=d=0,b>0,c>0である。どちらの場合も正の定数倍と座標の交換だけなので、ff1 は確かに第1象限を第1象限へ移す。よってこれらは必要十分条件である。

総評

難易度は5、計算量は4程度である。想定時間は18分から25分程度。「任意の第1象限の点」という条件を、係数の非負性に変換できるかが中心である。特定の点を代入するだけでは弱く、片方の変数を十分大きくする議論が必要になる。(2)では逆行列の成分に(1)を適用し、adbc の正負を分けると機械的に条件が出る。最後に十分性を確認しないと、必要条件だけの答案になるので注意したい。 2つの解法と解説図を相互に照合し、境界値・定義域・必要十分性・符号も確認した。

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出典: 北海道大学 1984年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。