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大阪大学 1993年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第3問

行列A=(abcd)に対してf(A)=a+dg(A)=bcadとおく.

(1) A2=f(A)A+g(A)Eを示せ.ただしE=(1001)である.

(2) n1のとき,An+1=pnA+qnEを満たすような数pnqnが存在することを示せ.

(3) 2次の正方行列ABf(A)=f(B)>0およびg(A)=g(B)0を満たし,さらにAn=Bnであるようなn2が存在するとき,A=Bが成り立つことを示せ.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安18

行列論証・証明 数学的帰納法恒等式比較、誘導利用

方針

(1) は成分を直接計算し,A2 の各成分が f(A)A+g(A)E と一致することを示す。(2)は(1)を使って,An+1=pnA+qnE と表せるなら次の指数でも同じ形で表せることを帰納法で示す。(3)では f(A)=f(B)g(A)=g(B) により係数 pm,qmA,B で共通になる点を使う。さらに f>0g0 から pm>0 を帰納的に示し,AnBn=pn1(AB) に帰着する。

解答

(1) A=(abcd)とする。直接計算するとA2=(a2+bcab+bdac+cdbc+d2)である。一方,f(A)=a+dg(A)=bcad よりf(A)A+g(A)E=(a+d)(abcd)+(bcad)(1001)=(a2+ad+bcadab+bdac+cdad+d2+bcad)=(a2+bcab+bdac+cdbc+d2)である。したがって A2=f(A)A+g(A)E が成り立つ。

(2) n=1 のときは,(1)より A2=f(A)A+g(A)E であるから,p1=f(A)q1=g(A) とすればよい。

ある nAn+1=pnA+qnE と表せたとする。両辺に A をかけると An+2=pnA2+qnA である。(1)を代入して An+2=pn{f(A)A+g(A)E}+qnA ={pnf(A)+qn}A+png(A)E となる。よって pn+1=pnf(A)+qn,qn+1=png(A) とおけば,n+1 の場合も同じ形で表せる。数学的帰納法により,すべての n1 についてそのような数 pn,qn が存在する。

(3)
共通の値を f=f(A)=f(B),g=g(A)=g(B) とおく。(2)の作り方を見ると,係数は p1=f,q1=g から始まり,pm+1=fpm+qm,qm+1=gpm で定まる。したがって,A に対しても B に対しても,同じ pm,qm を使うことができる。

ここで f>0g0 である。初めに p1=f>0,q1=g0 である。もし pm>0qm0 なら pm+1=fpm+qm>0,qm+1=gpm0 である。よって帰納的に,すべての m1pm>0,qm0 が成り立つ。

いま An=Bn となる n2 がある。上の表示を n1 に用いると An=pn1A+qn1E,Bn=pn1B+qn1E である。両式の差を取ると AnBn=pn1(AB) である。左辺は0であり,しかも pn1>0 だから AB=0 となる。したがって A=B である。

別解

解法2

方針

A2=fA+gE を使って Am の係数を明示的な数列 Um で表す。漸化式を組合せ数の和として解き、f>0,g0 のもとで係数が正であることを式から直接確認して An=Bn を比較する。

解答

(1)
成分計算によりA2(a+d)A=(bcad00bcad)=(bcad)E.したがって A2=f(A)A+g(A)E である。

(2)
f=f(A),g=g(A) とし、U0=0,U1=1,Um+1=fUm+gUm1とおく。このときAm=UmA+gUm1E(m1)が成り立つ。実際、m=1 では明らかであり、両辺に A を掛けて A2=fA+gE を使えば次の指数でも成立する。よって問題の記号ではpn=Un+1,qn=gUnとすればよい。

(3)
この数列はUm=j=0(m1)/2m1jCjfm12jgjと表せる。右辺が同じ漸化式と初期値を満たすことは、二項係数の関係から確かめられる。f>0,g0 なら、すべての項は非負で、j=0 の項 fm1 は正だからUm>0(m1).A,B では f,g が共通なので同じ Um を使える。したがってAnBn=Un(AB).仮定より左辺は0であり、Un>0 だから AB=0、すなわち A=B である。

総評

2次正方行列の計算を,A と単位行列 E の一次結合へ落とし込む証明問題である。目安時間は18分。(1) は成分計算を省くと説得力が落ちるので,対角成分で bcad が効いていることを明示したい。(2) は帰納法の更新式まで書けば十分である。(3) では係数 pm,qmf,g だけで決まり,A,B で共通になる点が要点である。さらに pm>0 を示してから割る,という順序を守ると論理の穴が残らない。

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出典: 大阪大学 1993年度 前期 数学。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。