方針
逆行列が存在しない条件は det(A−tE)=0 である。行列 A は各行の和が 1 なので、t=1 が一つの解になる。もう一つの解は、2次式 det(A−tE) の定数項、すなわち detA から求める。正の条件は cos2θ−cos22θ>0 を因数分解し、0<θ<π/2 で符号を調べる。
解答
(i) A−tE の逆行列が存在しない条件は det(A−tE)=0 である。行列 A の各行の成分の和は cos2θ+sin2θ=1,cos22θ+sin22θ=1 であるから、t=1 のとき A−E の各行の和は 0 となり、逆行列をもたない。
また det(A−tE) は t についての2次式で、t2 の係数は 1 である。2つの解の積は detA だから、もう一つの解を t2 とすると 1⋅t2=detA である。したがってt2=cos2θsin22θ−sin2θcos22θ=cos2θ(1−cos22θ)−(1−cos2θ)cos22θ=cos2θ−cos22θ.よって求める t は t=1,t=cos2θ−cos22θ である。
(ii) t=1 は常に正である。したがって、もう一つの値が正である条件を調べればよい。cos2θ−cos22θ=(cosθ−cos2θ)(cosθ+cos2θ)である。0<θ<π/2 では cosθ>0 であり、cosθ−cos2θ>0 が成り立つ。よって必要十分条件は cosθ+cos2θ>0 である。 c=cosθ とおくと、0<c<1 であり、cos2θ=2c2−1 だから cosθ+cos2θ=2c2+c−1=(2c−1)(c+1). c+1>0 なので、条件は 2c−1>0 すなわち cosθ>21 である。したがって 0<θ<3π である。
別解
解法2
方針
行列式を t の2次式として直接展開する。三角関数の基本関係で係数を整理すると直ちに因数分解でき、2つの t と正値条件が同時に見える。
解答
det(A−tE)=(cos2θ−t)(sin22θ−t)−sin2θcos22θ=t2−(cos2θ+sin22θ)t+cos2θ−cos22θ.ここでcos2θ+sin22θ=1+cos2θ−cos22θだからdet(A−tE)=(t−1){t−(cos2θ−cos22θ)}.よってt=1,t=cos2θ−cos22θ.両方が正であるためには、後者が正であればよい。cos2θ−cos22θ=(cosθ−cos2θ)(cosθ+cos2θ).0<θ<π/2 ではcosθ−cos2θ>0 なので、cosθ+cos2θ>0.c=cosθ とおくと2c2+c−1=(2c−1)(c+1)>0.0<c<1 より c>1/2 であり、0<θ<3π.
総評
難度6、計算量5。逆行列が存在しない条件は行列式が0になること。t=1 は行和から見抜けるが、もう一つの値の正負は cosθ+cos2θ まで因数分解して判定する。 2解法の最終値を照合し、境界条件・符号・定義域も確認した。
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出典: 東北大学 1996年度 前期日程 理系 第2問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。