Evolton

東北大学 2008年度 前期日程 第2次学力試験理系数学 第5問

aを実数として,2次の正方行列A,Bを次のように定める.A=(1a+10−1),B=(a02−a)このとき,((cos⁡t)A+(sin⁡t)B)2=Oをみたす実数tが存在するようなaの範囲を求めよ.
ただし,Oは零行列とする.

難易度6/ 10計算量5/ 10目安22分

行列、三角関数 必要十分条件、判別式、計算整理

方針

c=cos⁡t,s=sin⁡t と置き,M=cA+sB を直接二乗する。M は対角成分の和が0の形になるため,M2=O は c,s の同次二次式が0になる条件に落ちる。最後は (c,s)≠(0,0) の実数解が存在する条件を判別式で調べ,同次式なので解を正規化すれば c2+s2=1 にできることも確認する。

解答

c=cos⁡t,s=sin⁡t とおく。このとき c2+s2=1 であり,特に (c,s)≠(0,0) である。 M=cA+sB とおくとM=(c+as(a+1)c2s−c−as)である。ここで U=c+as,V=(a+1)c,W=2s と書けばM=(UVW−U)である。この形の行列を二乗するとM2=(U2+VW00U2+VW)となる。したがって M2=O であるための条件は U2+VW=0 である。

これを c,s で書くと (c+as)2+2(a+1)cs=0 である。展開して c2+2(2a+1)cs+a2s2=0 を得る。

もし s=0 なら,c2+s2=1 より c≠0 であり,上の式は c2=0 となって矛盾する。したがって解があるなら s≠0 である。そこで r=cs とおくと r2+2(2a+1)r+a2=0 となる。この二次方程式が実数解をもつことが必要十分である。

判別式が0以上であればよいから {2(2a+1)}2−4a2≧0 である。整理して 4{(2a+1)2−a2}≧0 すなわち 3a2+4a+1≧0 である。因数分解すると (a+1)(3a+1)≧0 である。

よって求める範囲は a≦−1,−13≦a である。逆に,この範囲では上の二次方程式に実数解 r がある。非零の組 (r,1) は同次二次式を満たすので,これを正規化すれば c2+s2=1 を満たす組が得られる。したがって実際にある実数 t が存在する。

別解

解法2(二次形式の符号)

方針

行列を二乗して得られる条件を (cos⁡t,sin⁡t) の二次形式と見る。単位円上に零点をもつ条件は、対応する実対称行列が不定または特異であること、すなわち行列式が0以下であることに等しい。

解答

c=cos⁡t, s=sin⁡t とおく。直接計算すると{cA+sB}2={c2+2(2a+1)cs+a2s2}Iである。したがって必要十分条件は、単位ベクトル (c,s) に対して(cs)(12a+12a+1a2)(cs)=0となることである。

実対称な 2×2 行列に対する二次形式が非零ベクトル上で 0 をとるのは、2つの固有値の符号が異なるか、少なくとも一方が 0 のときである。これは行列式が 0 以下であることと同値である。よってa2−(2a+1)2≦0.整理すると3a2+4a+1=(3a+1)(a+1)≧0.したがってa≦−1またはa≧−13.この条件のもとで得られる非零の零ベクトルを長さ1に正規化すれば、ある実数 t の (cos⁡t,sin⁡t) として表せるので、十分性も満たされる。

総評

難度は10段階中6、計算量は10段階中5。試験場での目安は22分で、行列条件を三角関数の存在条件へ落とす問題である。採点点は、対角成分の和が0の行列の二乗を正しく計算すること、c,s の同次二次式にして判別式を使うこと、得た非零解を正規化すれば cos⁡t,sin⁡t と見なせる点を確認することにある。最初から tan⁡t だけで進めると s=0 の扱いを忘れやすいので、先に除外しておくと安全である。

冊子PDFで見る東北大の行列の問題で問題集を作る

出典: 東北大学 2008年度 前期 数学(大学公式の問題PDF)。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。