方針
sin2x=(1−cos2x)/2 を用いて積分を正確に計算し、値を eπ の式へ直す。残る eπ>21 は、問題文から読める e>2.7、π>3.14 と、微分で示せる eu>1+u を組み合わせて証明する。
解答
まず積分値を計算する。 sin2x=21−cos2x であるから∫0πexsin2xdx=21∫0πexdx−21∫0πexcos2xdx.ここで dxd{5ex(cos2x+2sin2x)}=excos2x である。したがって∫0πexcos2xdx=[5ex(cos2x+2sin2x)]0π=5eπ−1である。また∫0πexdx=eπ−1である。よって∫0πexsin2xdx=21(eπ−1)−21⋅5eπ−1=52(eπ−1).したがって、示すべきことは 52(eπ−1)>8 すなわち eπ>21 である。
これを示す。e>2.7、π>3.14 であり、u>0 に対して eu>1+u が成り立つ。よって eπ=e3eπ−3>2.73e0.14>2.73(1+0.14) である。ここで 2.73=19.683 なので 2.73⋅1.14=22.43862>21 である。したがって eπ>21 である。
以上より∫0πexsin2xdx=52(eπ−1)>52(21−1)=8である。よって∫0πexsin2xdx>8が示された。
別解
解法2
方針
指数関数を4次多項式で下から評価し、その多項式に sin2x を掛けて直接積分する。多項式評価は差を5回微分して符号を戻すことで示し、積分値は部分積分の漸化式で厳密に計算する。
解答
x≧0 に対しex>1+x+2x2+6x3+24x4(x>0)を示す。左辺から右辺を引いた関数を g(x) とすると、g(0)=g′(0)=⋯=g(4)(0)=0 であり、g(5)(x)=ex>0 である。微分係数の符号を順に戻せば x>0 で g(x)>0 となる。
従って∫0πexsin2xdx>∫0π(1+x+2x2+6x3+24x4)sin2xdx.Jk=∫0πxkcos2xdxと置く。部分積分を2回行うと k≧2 についてJk=4kπk−1−4k(k−1)Jk−2,また J0=J1=0 である。従ってJ2=2π,J3=43π2,J4=π3−23π.sin2x=(1−cos2x)/2 を用いて整理すると、右辺の積分は3213π+163π2+16π3+48π4+240π5.この式は π>0 で増加し、問題文より π>3.14 だから3213π+163π2+16π3+48π4+240π5>8.36>8.以上から∫0πexsin2xdx>8が従う。
総評
まず積分を正確に求めて指数不等式へ帰着する解法が最短である。問題文の小数表示は e>2.7, π>3.14 を使ってよいという手掛かりになっている。第2解法は指数関数の多項式下界を微分だけで証明しており、級数展開を黒箱にしていない。どちらも数値近似だけで結論を出さず、厳密な下界が8を超えることを示す。
冊子PDFで見る東大の積分の問題で問題集を作る
出典: 東京大学 1999年度 前期 理系 第6問。問題文はHTML表示のために再入力・数式組版しています。